NEWS 石巻かほく

このエントリーをはてなブックマークに追加
2018.01.12

金沢・徳田秋聲記念館を訪ねて 代表作「縮図」に、石巻の千登里

金沢市内にある徳田秋聲記念館。目の前を浅野川が流れている

作家・五木寛之の作品や資料が充実している金沢文芸館(右)。金沢は五木ゆかりの地でもある

 石川県金沢市は「文学のまち」である。金沢の三文豪と言われるのが泉鏡花、徳田秋聲、室生犀星−だ。中でも徳田秋聲(1871〜1943年)は、石巻とも縁がある。彼の代表作「縮図」(時代設定・昭和初期、発表時期・昭和16年)には、石巻が舞台の一つとして描かれている。

 新幹線を乗り継ぎ、金沢市にある徳田秋聲記念館を訪ねた。

 記念館に入ると、和紙人形シアターがあった。秋聲の代表的作品から5人の女性主人公にスポットを当て、その女性像を通して秋聲作品の魅力を浮かび上がらせるシアター空間だ。

 その一人が「縮図」に出てくる銀子という女性。家族を支えるために芸者として働くが、プライドを失わない銀子の生き方は現代の読者にも共感を呼ぶ。

 『銀子はちょっと顔を直し、子供に留守を頼んで家を出たが、そこは河に近い日和山の裾にある料亭で、四五町もある海沿ひの道を車で通ふのであった』

 銀子のゆかりの場所が、仲町(石巻市中央2丁目)の広小路に面した待合「千登里」だった。千登里は昭和60年代初めまで残っていたが、その後、解体された。

 銀子のモデルは群馬県生まれの小林政子で、10代の時、石巻に住んでいたという。秋聲は、彼女が20代後半のころに出会った。61歳の時だ。「縮図」が完成したのは10年後、71歳になっていた。それから2年後に秋聲は亡くなっている。

 自然主義文学の最高峰だった秋聲の「縮図」の中に、花柳界で活気に満ちた港町・石巻をしのぶことができる。和紙人形の銀子を通して華やぎしころの石巻が見えた。

<鏡花や文芸館を歩いて巡ろう>

 浅野川を挟んだ向かいに、泉鏡花記念館がある。生家跡に建つ記念館で、独特の美意識に触れられる展示に、女性ファンの姿が目立った。浪漫主義の大家だった鏡花の世界を堪能できる。

 近くには金沢文芸館もある。無名時代を金沢で過ごした五木寛之の関連資料が充実している。この地にいた時、「蒼ざめた馬を見よ」で直木賞を取った。金沢は、作家・五木寛之の誕生の地とも言える。

 この3カ所は歩いて回れる距離だったが、室生犀星記念館だけ離れていて行けなかった。もう一つの川、犀川沿いにあるからだ。金沢という街は、浅野川と犀川という二つの川に挟まれて発展した街だった。「文学のまち」散歩を楽しんだ。(久野義文)


スポンサーリンク

ページの先頭に戻る