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2017.07.02

コマイぬ、みちのく怪談を熱演 死者と生者つなぐ 女川公演

女川町の照源寺で、よみ芝居を熱演する芝原さん(左)。ギターは横山さん

息の合った、よみ芝居で引き付ける菊池さん(右から2人目)と冨樫さん。左端はバイオリンのかじさん

 演劇ユニット・コマイぬの「よみ芝居」が6月25日、女川町浦宿浜の照源寺で行われた。演じたのは「あの日からのみちのく怪談」。

 用意した椅子が足りなくなるほど、会場いっぱいに詰め掛けた町民らを、死者と生者をつなぐ物語に誘った。怪談に込められていたのは心の救済だった。

 東日本大震災後、石巻市出身の役者・芝原弘さんが立ち上げたのがコマイぬ。芝居で支援したいという思いに共感したのが劇団「青年団」所属の菊池佳南さん(岩沼市出身)。

 街が津波でほぼ壊滅した被災地・女川で、よみ芝居をするのは初めて。2人に、冨樫かずみさん(ぷろだくしょんバオバブ)が読み手に加わり、さらに、かじみなみさん(さっちんたい)のバイオリン、横山大地さん(虹艶Bunny)のギターによる演奏が、よみ芝居の世界を創り上げた。

 題材にしたのは東北怪談同盟編の「渚にて あの日からの<みちのく怪談>」(仙台・荒蝦夷発行)である。震災後、東北の作家たちが綴(つづ)った海辺の怪異譚だ。収録作品の中から「白い花弁」「再会」「私の話」「水辺のふたり」「父の怪談」「背中」など9編を取り上げた。

 多くは、逝った者と遺(のこ)された者の再会の物語だ。怪談というと「怖い」「恐ろしい」というイメージを抱きがちだが、聞く者を包み込んだのは意外にも温かさであり、優しさだった。

 客席の中には、震災で家族や知り合いを亡くした人もいただろう。この日、よみ芝居から受け取ったのは一時だけれど、再会の時間だった。悲しみが拭える日は来ない。でも、逝った者は去ったのはではない、自分の心の中に生きている。よみ芝居は、そのことを気づかせてくれた。

 よみ芝居の前に行われた芝原さんと、荒蝦夷代表取締役の土方正志さん、作家の黒木あるじさんの3人のトークで印象に残ったやり取りがある。

 「亡くなられた方の人となりが分かっている。だから怖がる人はいない。逆に、もう一度会いたいという思いが強い。東北の怪談の根っこにあるのは、東北の人の死生観かもしれない」

 公演後、菊池さんは「今まで4カ所でやってきたが、どの場所よりも女川での公演の体験が一番濃厚だった」、芝原さんは「女川での公演はお客さんの視線が本当に真っすぐだった。場所の力、土地の力、そこに住む人々の背景、いろいろなものが絡み合った公演だった。今までと全く違う時間を過ごした」とそれぞれ強調。

 彼らにとっても女川でのよみ芝居は特別な体験になったようだ。 (久)


■いしのまき演劇祭、コマイぬ公演は11月23日

 11月に開催される「第2回いしのまき演劇祭」に、コマイぬが参加する。上演作品も決まった。

 コマイぬの公演日は11月23日。上演時間、場所は未定。

 作品は「ラッツォクの灯」。原作は仙台市在住の作家・熊谷達也さんの「希望の海 仙河海叙景」(集英社)。東北の港町に生きる人々の姿を通して紡がれる、3.11からの再生の物語である。

 演劇祭に出演するコマイぬのメンバーは、芝原さんが所属する黒色綺譚カナリア系派で構成。脚本・演出は赤澤ムックさん。


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