NEWS 石巻かほく

このエントリーをはてなブックマークに追加
2017.05.20

記者が紹介・本の愉しみ/「只野真葛の奥州ばなし」

<江戸後期の女性文筆家>

 江戸後期に仙台で暮らした只野真葛(まくず)(1763〜1825年)という女性文学者がいた。一般にはあまりなじみがないのではないか。

 20年ほど前、真葛を主人公にした永井路子さんの小説を読んだ記憶がある。今は『葛の葉抄 只野真葛ものがたり』として文春文庫で読める。

 真葛は日本の女性解放の第一声を上げたとか、女性の自立をテーマに優れた評論を書いたとか、てっきり小難しい人かと思っていた。『只野真葛の奥州ばなし』で彼女の作品を読んで、こんなに面白く、愉快な話を書いていたのか、と驚いた。

 本書は、真葛が親類らから聞いた不思議な話、心に残った話など27編を収めた怪異譚集。奥州市出身の日本ファンタジーノベル大賞作家、勝山海百合(うみゆり)さんが流麗な現代語訳でよみがえらせた。

 ある日、家に帰ると自分とそっくりな男の後ろ姿が…。怪談「影の病」は、自分の姿を見ると寿命が尽きるという「ドッペルゲンガー」を日本で初めて書き留めたとされる物語。ある家の主人が3代続けて同じ体験をして亡くなったことが記される。

 石巻ゆかりの話も収録されている。「七ケ浜」は、今の石巻市雄勝町大須とみられる地が舞台の物語。大須で疱瘡(天然痘)がはやり、多くの死者が出た。追い打ちをかけるように、埋葬された遺体が掘り起こされ、食べられる事件が起こる。住民は悪魔よけのため、風越峠の頂上に角塔婆(かくとば)を建てるのだが…。

 真葛は仙台藩の医者の娘として江戸で生まれ育った。伊達家の江戸藩邸の奥女中奉公、結婚、離縁を経て35歳で仙台藩士只野伊賀の後妻となり、仙台に移り住んだ。

 仙台暮らしは文筆家としての真葛の秘めた才能を呼び覚ましたのかもしれない。筆致は生き生きとして、どこか懐かしいぬくもりがある。(古)


■「只野真葛の奥州ばなし」勝山海百合現代語訳(荒蝦夷、2100円+税)
■「葛の葉抄 只野真葛ものがたり」永井路子著(文春文庫、810円+税)


スポンサーリンク

ページの先頭に戻る