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2017.03.18

記者が紹介・本の愉しみ/ジョージ・オーウェル著「一九八四年」

<反ユートピアの世界>

 高校時代に読んで、衝撃を受けた1冊がジョージ・オーウェル著「1984年」(新庄哲夫訳)だった。

 それから40年以上が過ぎて、今また同じ作品を読み返すことになるとは思わなかった。しかも高橋和久による新訳版。表紙のタイトルも算用数字ではなく「一九八四年」。

 ページから飛び込んできた文章があった。そのレトリックがとても恐ろしい半面、新鮮に映った。新訳では、太い文字で、こう訳されている。

 “戦争は平和なり
  自由は隷従なり
  無知は力なり”

 全体主義的な近未来を舞台にした、皮肉と風刺と毒に満ちた小説。人々はテレスクリーンで監視され、思想は統一されている。それどころか権力者の都合のいいように歴史は常に改ざんされていく。

 ある意味、一番感心したのは、使用できる言葉を徐々に制限していくシステム。表現できる語彙(ごい)が少なくなればなるほど国民(市民)の考え方は狭まる。ついには思考することさえ難しくなる。権力側の思うつぼである。

 その権力を象徴するのが『ビッグ・ブラザー』である。随所に次の文が踊っている。

 “ビッグ・ブラザーがあなたを見ている。”

 この小説の主人公は、こうした社会に疑問を持ち始めるウィンストン・スミス。歴史の改ざんが仕事。彼の勤める役所の名前がものものしい。真理省記録局。ウィンストンの運命が描かれる。

 「一九八四年」はオーウェル最後の著作で、1949年に発表された。彼の頭にあったのは、ほんの少し前まで欧州を覆ったナチやファシズムの恐怖だった。

 それが今、米国内で再びベストセラーになった。なぜ…。トランプ政権が誕生したからだ。文庫のオビにこう記されている。

 “世界の『今』を予言した傑作古典”

 反ユートピアの世界に招く。(久)


■「一九八四年」ジョージ・オーウェル著(ハヤカワepi文庫、860円+税)


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