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2016.07.28

インタビュー>いしのまき・人模様 いしのまき演劇祭

芝原弘さん

◇役者、演劇ユニット「コマイぬ」 芝原弘さん(34)

<古里の「今から」に一役>

 演劇の魅力って何だろう。

 「役者と客席が同じ時間を一緒に過ごし、思いを共有する。観客は日常では体験できない特別なものをダイレクトに受け取る」

 「感動」と呼ばれる特別なものが、見た人たちの心の支えになっていく。上演時間は1時間か2時間くらいかもしれない。だが、その時の特別な体験が観客一人一人の中で、これからずっと生きる力になっていく。

 その演劇の力を信じて、仲間たちと立ち上げたのが「いしのまき演劇祭」である。7月の街中をにぎわしている。

 「ゼロから始めた。やる気さえあれば、できると信じた」

 5団体が賛同。地元の劇団もあれば、東京からも参加。7月いっぱい毎週土、日曜をメインに、いずれかの団体が公演。街中に演劇文化の空気をつくりだしている。

 5年前の東日本大震災がきっかけだった。高校卒業と同時に離れたつもりの古里・石巻に、いつの間にか足を向けていた。

 「石巻西高時代は演劇部だった。役者になりたくて、上京した。東京志向が強かった。家には1年に1回帰るかどうかだった。でも、震災が変えた。演劇人の一人として自分にできることは古里の人々の心に希望をともすこと。スコップを持っていくことではなく、演劇を持っていくことだと思った」

 古里での定期公演を目指して2013年に結成したのが演劇ユニット「コマイぬ」だった。2年後の15年10月、念願の古里初公演を実現させた。

 ブログで決意を語っている。「一過性のモノでなく、その故郷に住み続ける人々が、その故郷で集まり、その人々同士が交流するきっかけとなるモノ、定期的なモノとしての場になれないかなと思いました」

 震災後、石巻に帰って来るたびに友達が増えていった。つながりが広がっていくことに、古里での演劇の可能性を見た。

 高校時代の旧友には「まだ、やっているのか」と驚かれることもあった。「たぶん、あきれて言ったのだろうけれど、自分には褒め言葉に聞こえた。あのころの夢だったことをまだ、追い続けていられるのだから」

 普段は都内のホテルで働いている。演劇だけで食べていけないのが現実だ。が、好きだからこそ頑張れる。今は新たな目標ができた。被災した古里・石巻に、演劇文化を仲間たちと根付かせることである。

 「震災後、フェイスブックのプロフィルに石巻出身と書き入れる人が増えた。その中に演出家の矢口龍汰さんがいた。渡波出身だった。自分一人でないんだと勇気づけられた」

 「一緒に古里でやろう」と意気投合。いしのまき演劇祭に結実していった。

 矢口さんがプロデュースする劇団「R」は、演劇祭の4週目に登場。23、24日に上演した。

 「演劇の場合、復興に即効性はないが、恩返しの意味を込めて、古里の『今から』に関わっていきたいと思った。来年の演劇祭に参加したいという声が、既に仙台や東京の劇団から挙がっている」

 初のイベントに手応えを感じている。第1回の演劇祭を締めくくるのがコマイぬ。30日、幕が上がる。

■しばはら・ひろし
 1982年、石巻市(旧河南町)生まれ。石巻西高から桐朋学園短期大学部芸術学科演劇専攻卒業。劇団ドロブラ旗揚げに参加。2006年、黒色綺譚カナリア派に参加。12年から1年間、児童劇団の全国巡業に参加、さまざまな経験を積む。13年、コマイぬ結成。目標とする俳優は上川隆也さん。真摯(しんし)な姿勢に学ぶべきことが多いという。東京都調布市在住。

(久野義文)


◇いしのまき演劇祭 http://i-engekisai.jimdo.com/

※関連記事
「2016/07/03〜30 いしのまき演劇祭」
 http://ishinomaki.kahoku.co.jp/blog/blog/201607/23611
「古里での初公演、盛況 芝原さん『石巻に拠点つくって今後活動』(2015.10.22)」
 http://ishinomaki.kahoku.co.jp/news/2015/10/20151022t13002.htm
「芝居で古里に恩返し 震災後の石巻が舞台 芝原さん、11日公演(2015.10.03)」
 http://ishinomaki.kahoku.co.jp/news/2015/10/20151003t13005.htm


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