写真集「石巻 2011.3.27~2014.5.29」webサイト展[41・完]-2014年より(7・完)
◇田植え唄が聴こえる 賀茂(かも)へ詣(まゐ)る道に、田植(たう)うとて、女(をんな)の、あたらしき折(を)敷(しき)のやうなる物を笠(かさ)に着て、いとおほう立ちて、歌をうたふ。折れ伏すやうに、また何事するとも見えで […]
◇田植え唄が聴こえる 賀茂(かも)へ詣(まゐ)る道に、田植(たう)うとて、女(をんな)の、あたらしき折(を)敷(しき)のやうなる物を笠(かさ)に着て、いとおほう立ちて、歌をうたふ。折れ伏すやうに、また何事するとも見えで […]
◇大地の詩 大地の詩(うた)は 決して滅びない。 小鳥たちがみな 暑い太陽にげんなりして 涼しい木蔭にかくれるとき、歌声は 新しく刈り取られた牧場の 垣根から垣根へと伝わってゆく。 それはきりぎりすの歌声だ--華やいだ夏 […]
◇仮設 一人はあかりをつけることが出来た そのそばで 本をよむのは別の人だつた しづかな部屋だから 低い声が それが隅の方にまで よく聞えた(みんなはきいてゐた) 一人はあかりを消すことが出来た そのそばで 眠るのは別の […]
◇馬鹿写真家 めしの あと ちょっと いねむり めが さめて にはい おちゃ のむ あたま あげ ひあしを みれば にしみなみ いつか かたむく たのしけりゃ ひが みじかいし くるしけりゃ いちねん ながい くるしみも […]
◇わが身ひとつ 月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして 在原業平「古今和歌集 巻第十五 恋歌五」747 月はそうではないのか。春は昔の春ではないのか。わが身はもとのままなのに。 古代の人は詠います。恋 […]
◇深き世界より 淡(あは)い粉雪(こゆき)が降(ふ)るわいな 乳母(うば)と下女(げぢよ)とはむかひゐて 世間(せけん)ばなしに夜(よ)を更(ふ)かす 村(むら)の芝居(しばゐ)で見(み)るやうな 圓(まる)い行燈(あん […]
◇五月の唄を待つ ロバと王様とわたし あしたはみんな死ぬ ロバは飢えて 王様は退屈で わたしは恋で 白墨(はくぼく)の指が 毎日の石盤に みんなの名を書く ポプラ並木の風が みんなを名づける ロバ 王様 人間と ………… […]
◇しぐさとまなざし たとえば日本人は悲しいときにほほえみをうかべていることがある。われわれには、そのほほえみがけっして喜びや愉快さからきているものでないことが、よくわかる。悲しがって泣くのが当然のときに、その悲しみにた […]
◇灯(ひ)と陽(ひ)、うちとそとと 深い夜の管のなかに私がいた 管はどこまでも右へ右へと彎曲していて 奥へすすむにつれ 狭くなっていったそれは夜の蝸牛殻であった 私は渦巻状に整列した級数を一つずつ確めながら 無限小に近 […]
◇暮らしのなかでこそ もし日本座敷を一つの墨絵に喩へるなら、障子は墨色の最も淡い部分であり、床の間は最も濃い部分である。私は、数奇を凝らした日本座敷の床の間を見る毎に、いかに日本人が陰翳の秘密を理解し、光りと蔭との使ひ […]