俳句(1/6掲載)

俳句

【石母田星人 選】

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雁百羽二百羽が湧く峡の暮  (石巻市桃生町・西條弘子)

【評】日没前後の峡の光景。採餌に散らばっていた雁が編隊を組んで戻ってきた。その群れに魅了されていたら、別の方角からもさらに大きな群れが現れた。夕空が雁で覆われてゆく。上五から中七の「百羽二百羽」は単なる数字の羅列ではない。「百羽」と「二百羽」の間には、「否(いや)」と前の数を取り消す思いが省略されている。どんどん増える雁に圧倒されている。

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光年の旅してみたし初御空  (東松島市矢本・紺野透光)

【評】元日の空は晴天でも曇天でも清らかで荘厳。天空をあがめる気持ちになることから初御空と言う。初御空を見上げて心に生まれ出たのは「光年の旅」という思い。中七の表記法には違和感があるが、宇宙を自在に往還してみたい願望と読んだ。壮大な夢だ。

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子等来る日大きく記す古暦  (石巻市小船越・三浦ときわ)

【評】連絡があって暦に大きな丸を付けたときから待つ楽しみが始まる。玄関を開き「ただいま」と飛び込んでくるまで、壁の大きな丸は輝き続ける。

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高台へ移りて何処ぞ隙間風  (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

【評】新住居で迎える初めての冬。隙間風は切実な問題だが、「何処ぞ」の言い回しには深刻さがない。困難を小さなこととして楽しむ余裕さえ感じられる。

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詩のかけら拾ふ夢路や冬のばら  (石巻市大森・横山つよし)

古民家の座敷に夢二春小袖  (東松島市新東名・板垣美樹)

若冲の画集もとめし文化の日  (石巻市小船越・加藤康子)

人生も退屈ですと冬すみれ  (石巻市吉野町・伊藤春夫)

撒くパンの着地の待てぬ冬雀  (石巻市開北・星雪)

今更に無知を嘆くか冬鴎  (石巻市中里・須藤清雄)

老夫婦弥栄祈り屠蘇を酌む  (東松島市矢本・雫石昭一)

復興はまだ道半ば年の暮  (石巻市元倉・小山英智)

つんぬきを羽織り厨に立つ夕べ  (石巻市駅前北通り・津田調作)

今風に長きストール昭和の子  (石巻市中里・川下光子)

木守りのゆれる山里暮早し  (仙台市青葉区・狩野好子)

吊し柿過疎をどつしり重くする  (東松島市矢本・菅原れい子)

菊花にストック加へ仏花かな  (石巻市広渕・鹿野勝幸)

ひりひりと肌に染み入る柚子湯かな  (石巻市門脇・佐々木一夫)

米寿とて一つ加える福達磨  (石巻市南中里・中山文)

絵手紙の海老がはねてる小六月  (東松島市野蒜ケ丘・山崎清美)

【2019年1月6日(日)石巻かほく掲載】

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