短歌(11/18掲載)

短歌

【佐藤成晃 選】

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島の子の通い船待つ塾カバン島を出る夢いっぱい詰めて  (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

【評】離島の学校に通う児童生徒の姿を見ての一首。学校カバンの他に塾のカバンも背負っていたのだろう。一生懸命学習に励んでいる子どもに感心しながらも、作者の感動は複雑だ。この島を出るために勉強している子どもたちなのだ。故郷を守るとか、島の発展に努力するなどの「受ける」発想とはやや異なる夢を持って勉強に励む少年少女達なのだ。上の句は「通い船待つ島の子の塾カバン」とすれば解りやすくなるが、「塾カバン」を目立たせる意図から敢えてこのように表記したのか。

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子や孫に誇る背も無き老の坂せっせと今日も畑耕す  (石巻市蛇田・菅野勇)

【評】子や孫には背中で物を言え、という。口やかましく説教などしないで、態度で生き方を教えよ、ということか。作者は今「畑耕す」という背中で自分の生き方を子や孫に見せようとしているのだろう。しかも、意識して演じているふうでもないところがこの作品を佳作に仕立て上げているのではないか。「老いの坂」は楽ではない。その苦しさの中で人生を耕す平凡にして実直な作者像が見える一首。

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先人のしるべを杖に探るごと捨てたる短歌(うた)をまた掘り起こす  (東松島市大曲・阿部一直)

【評】「しるべ」は道案内のこと。短歌の作り方などについて先人たちが残した教えは少なくはない。若いころに読んだ本の記憶が残っているのだろうか。そこには「推敲のしかた」みたいなものもあったに違いない。一度捨てた自分の作品をもう一度呼び戻していろいろと手を加えている作者が見えるようだ。作歌の醍醐味はここにある、とでも言いたがっている一首だ。

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短歌(うた)編むとひねりひねりて海に着く秋はことさら秋刀魚(さんま)が光る  (石巻市駅前北通り・津田調作)

千人の患者と医師に祝されて吾が誕生の日の再診通知  (石巻市恵み野・木村譲)

日だまりにサフランの花咲きはじむメシベ抜かれることも知らずに  (仙台市青葉区・岩渕節子)

介護とふ修羅場の分かる人なれば見舞ふ言葉に真の籠りて  (石巻市向陽町・中沢みつゑ)

塗(ぬ)り箸(ばし)の先の剥(は)ぐれど捨てられず使い続けし夫婦(めおと)箸ゆえ  (石巻市中央・千葉とみ子)

草の刃にスッと指切る痛みもて雨夜に励みしあの日の浮かぶ  (石巻市開北・星雪)

小春日にいまは少なき花求めただひたむきに蜜蜂の飛ぶ  (石巻市蛇田・梅村正司)

刈り終えし田圃(たんぼ)に列なす稲株に二番ポゲ最早(もはや)青く伸びおり  (東松島市矢本・奥田和衛)

手拭いを縫いし袋に竹筒さしてイナゴ捕(と)りにき学童われら  (石巻市駅前北通り・庄司邦生)

たくさんの期待の中を淡々と進むドラフト息凝らし見る  (石巻市南中里・中山くに子)

朝まだき浦風なぎし海面に海苔(のり)豊満に黒光りなす  (石巻市門脇・佐々木一夫)

街並みが黄金色に染め上がるいちょう並木の枯れ葉が舞って  (石巻市不動町・新沼勝夫)

真っ黄色に垂れたる陸稲(おかぼ)は刈られゆくニラの花ゆれる隣りの畑に  (石巻市丸井戸・松川友子)

売り物の梟(ふくろう)の前に腰かがめお手々合わせて祈れる童女  (石巻市須江・須藤壽子)

子どもの頃しょうゆ味噌買い手伝った老舗(しにせ)の店が暖簾(のれん)をおろす  (石巻市丸井戸・高橋栄子)

ゆっくりと暴風域を伴いて台風去りし後のこおろぎ  (女川町・阿部重夫)

法然様ゆかりの寺をめぐり行く紅葉重なる月輪寺(げつりんじ)にも  (石巻市相野谷・武山昭子)

【2018年11月18日(日)石巻かほく掲載】

■作品を募集中

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 募集要項は次の通りです。

 短歌、俳句、川柳とも必ずはがきを使い、1枚に3首・句まで。いずれも自作の未発表作品に限ります。作品は返却しません。

 作品と同じ面(裏面)に氏名(筆名の場合は本名も)・住所・年齢(学年)・電話番号を記し、〒986-0827石巻市千石町4の42、三陸河北新報社編集部・文芸係(短歌、俳句、川柳を明記)まで。連絡先は0225(96)0321。


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