俳句(10/28掲載)

俳句

【石母田星人 選】

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分け入つて羅漢と遊ぶ秋の蝶  (石巻市桃生町・西條弘子)

【評】草むらをかき分けるように飛んできた秋蝶。羅漢の前にたどり着くとその周りを舞い始めた。像の肩に羽を休める蝶もいて、羅漢にほほ笑みが浮かぶ。この句の羅漢は十六羅漢だろうか五百羅漢だろうか。野外の像に出会うと、誰でも初めはその姿に圧倒され驚かされるものだ。だが、そばにいるとだんだん心が穏やかになるのを感じる。この句はそんな心の変化を秋蝶の動きに託して詠んでいる。

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午後四時の盃欲しき衣被  (石巻市中里・川下光子)

【評】この衣被(きぬかつぎ)は中秋の名月のお供え物ではない。これはお酒好きならではの吟詠。すぐにゆで上がった里芋の子。時計を見るとまだ4時。用意が早すぎた。ホカホカの酒のさかなを前に時はなかなか進まない。

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魚拓の魚ひらりと青し萩の風  (石巻市相野谷・戸村昭子)

【評】萩は秋の七草の一つ。鹿などの動物と一緒に詠まれた詩歌が多い。魚との取り合わせもまた新鮮。萩の風が起こした「ひらり」の動的な表現が効果的。

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尺八の遥かな調べ星月夜  (東松島市新東名・東奈美)

【評】月がなく満天の星だけの夜を星月夜という。星月夜は月夜とは違った趣がある。星月夜には尺八の調べが似合うと感じた作者。これもまた詩的実感。

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邯鄲(かんたん)は音叉の中に戻りけり  (東松島市矢本・紺野透光)

邯鄲や夜のしじまの深まりぬ  (石巻市駅前北通り・小野正雄)

秋草を分けてなぞるや道標  (石巻市飯野・高橋芳子)

振り塩の星座となれる初さんま  (石巻市小船越・三浦ときわ)

こどもらの声はずみをりさんま焼く  (石巻市桃生町・佐々木以功子)

秋夕焼小島へ帰る塾かばん  (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

洗車場水のかけらに秋夕焼  (東松島市あおい・大江和子)

山の風吹けば晴れます筆竜胆  (石巻市吉野町・伊藤春夫)

倒伏の稲に戸惑うコンバイン  (石巻市広渕・鹿野勝幸)

被災地の草の繁みや虫の宿  (東松島市矢本・雫石昭一)

照紅葉明るくのびる一本道  (仙台市青葉区・狩野好子)

食拒む老のまなざし秋澄めり  (石巻市開北・星雪)

渋皮煮茶うけに二つ秋麗  (石巻市門脇・佐々木一夫)

投函の音をたしかめ十三夜  (東松島市矢本・菅原れい子)

草の実や作業服から作業服  (東松島市野蒜ケ丘・山崎清美)

ふる里を想う窓辺に秋の月  (仙台市泉区・米倉さくよ)

【2018年10月28日(日)石巻かほく掲載】

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