カフェ文化(久野義文)

水紋

 「カフェ文化」。この言葉の響きが好きだ。

 「老人と海」で知られる米国の作家ヘミングウェーがパリに住んでいたころ、よく通ったカフェがモンパルナスにあるセレクトだった。彼の代表作「日はまた昇る」にも描かれている。

 セレクトはピカソ、マティス、藤田嗣治ら画家にも愛された。あの「華麗なるギャツビー」を書いたフィッツジェラルドも常連だったらしい。

 時の過ぎゆくのも忘れて、コーヒー一杯で、芸術論を闘わしたに違いない。自由な文化の薫りが立ち上り、パリという街の魅力の一端を担った。20年以上も前になるがここを訪れた。ヘミングウェーらがいたパリのカフェの空気を味わった。

 石巻市の街中には週に何回か足を運ぶ喫茶店がある。「加非館」だ。先日、紙面で紹介したが、東日本大震災後、貴重なたまり場になっている。

 店がある2階への階段を上がっていくと、お客の談笑が聞こえてくる。常連もいれば、復興ボランティア、街づくりに励む若者、イベントで街を盛り上げようとする演劇人や映画人、音楽関係者ら、そして震災を機に古里に足しげく通うようになった石巻出身者たち。

 日によって顔ぶれは違うが、加非館に行けば誰かに出会える。“人種のるつぼ”ではないが、予期せぬ出会いによる化学反応が、街に新たな魅力を醸し出している。

 加非館は石巻の“セレクト”だ。港町のにおいがするカフェ文化の空気を今日も嗅ぎにいこう。

(久野義文)

【2018年8月23日(木)石巻かほく掲載】


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