短歌(7/28掲載)

短歌

【佐藤成晃 選】

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古里のお米を研げば流れゆく白きキャンバスに父母(ちちはは)の家  (石巻市丸井戸・佐々木あい子)

【評】故郷からもらった米を研いでいる作者。最初の研ぎ汁を流した時、白いカンヴァスを思わせるような形で水中に沈んでいった真っ白な研ぎ汁の帯。それをキャンバスに見立てて、思わず子供時代の故郷の家のあれこれを、そのキャンバスに描いてみたのだ。下の句は、かなりの省略がほどこされている。どの言葉を捨てるかが作歌の場合は大きな問題になるはず。歌に残された言葉たちが一生懸命に働くことを念じての省略こそ歌を生かす一つの方法である。

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青空を大きく見せてポプラの木ここから大河は海へとくねる  (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

【評】大きなポプラがあってこその大空。高くて広いという空のイメージは、実は高いポプラの木が演出しているのではないか、と作者は解釈したのだ。ここには目を引くような事件は無い。ただ、自然を見詰める作者の豊かな感性でもって魅力ある佳作に仕立てあげたのだ。その力でもって、大河が大きくカーブを切って海へそそぐ様までが、無理なく描写された一首になった。

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十代のセピアの記憶呼び起こす会津の旅のさざえ堂  (東松島市矢本・菅原京子)

【評】「セピアの記憶」という言葉を手に入れた時の作者の感動を想像している。震いに襲われるような感動を味わったのではないだろうか。短歌を創る人たちは、言葉と巡り合うことの幸せを味わうために作歌しているのかもしれない。数年ぶりに訪ねた会津での作品だが、この一首でもって作者は会津の理解者になったはず。惜しむらくは、結句がやや音数が足りないこと。他の作者の作品をたくさん読むことで問題は解決に向かいます。

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雲の無い紺碧(こんぺき)を飛ぶブルーインパルス実戦知らぬ機影つぎつぎ  (石巻市開北・星雪)

高校生は期末テストか無人駅のホームに溢れる夏の装(よそお)い  (石巻市羽黒町・松村千枝子)

亡父母(ちちはは)の踏み固めたる畑の道ゆかしなつかし我が散歩道  (東松島市大曲・阿部一直)

仮設跡に芝生(しばふ)も植えて整備終え子らの声待つばかりとなりぬ  (石巻市向陽町・中沢みつゑ)

ゴミ袋持ちましょうかと声掛ければ「運動ですよ」と媼(おうな)の笑顔  (石巻市蛇田・菅野勇)

診察を待つ間の歌集は儚(はかな)くて帰宅の午後にまた読みかへす  (石巻市恵み野・木村譲)

西日本の酷暑に働くボランティアあの日想われ頭が下がる  (石巻市桃生・千葉小夜子)

原っぱで幼なごころにもどれそうシロツメクサの花首飾り  (石巻市大門町・三條順子)

短歌(うた)に詠(よ)みカメラに収めしヨシ原にしじみ戻りしニュースいくたび  (仙台市青葉区・岩渕節子)

今年また雑巾(ぞうきん)縫いの老女らの針目乱れて二百枚仕上ぐ  (石巻市中央・千葉とみ子)

朝食に夏野菜など盛り付けぬ二種のトマトをほどよく散らし  (石巻市南中里・中山くに子)

折り紙のカドカド合わずに二重に見ゆ手術は六日後白内障の  (石巻市丸井戸・松川友子)

越境の庭の朝顔涼しげに今朝も咲きおり赤とむらさき  (石巻市駅前北通り・津田調作)

わが蒔(ま)きしほうれん草のとれる頃高き価(あたい)の値崩れとなる  (石巻市駅前北通り・庄司邦生)

映像に避難生活する人ら七年前の我を重ねる  (石巻市不動町・新沼勝夫)

箟岳(ののだけ)の聖なる地にて眺むればいずこの島か霞みて見ゆる  (石巻市飯野・川﨑千代子)

遥か海は眩(まぶ)しさばかりただ平らに海は動かず雲も動かず  (石巻市門脇・佐々木一夫)

【2018年7月28日(土)石巻かほく掲載】

■作品を募集中

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 募集要項は次の通りです。

 短歌、俳句、川柳とも必ずはがきを使い、1枚に3首・句まで。いずれも自作の未発表作品に限ります。作品は返却しません。

 作品と同じ面(裏面)に氏名(筆名の場合は本名も)・住所・年齢(学年)・電話番号を記し、〒986-0827石巻市千石町4の42、三陸河北新報社編集部・文芸係(短歌、俳句、川柳を明記)まで。連絡先は0225(96)0321。


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