コマイぬとの縁(久野義文)

水紋

 「6月30日、空けててください」

 まだ3月だった。先の話だったので理由を尋ねると、結婚パーティーを東松島の蔵しっくパークで開くという。彼ららしい演出と納得した。

 彼らとは演劇ユニット「コマイぬ」のこと。東日本大震災後、演劇人と知り合う機会が増えた。コマイぬとの出合いもその一つ。

 石巻市出身の俳優・芝原弘さんが2013年に立ち上げた。「古里を演劇で元気づけることができたなら」と願い、東京と古里を行ったり来たりし始めた。彼の活動に共感したのが、岩沼市出身で青年団所属の菊池佳南さんだった。

 2人とは取材を通じて知り合ったが、今では私が上京した折、一緒に観劇したり、カフェに行ったりと、楽しい時間を共有する間柄になった。それからしばらくして2人から入籍したことを知らされた。そして、冒頭の彼女のセリフになった。

 蔵しっくパークは2年前のいしのまき演劇祭の時、コマイぬが会場に使った。2人にとって縁のある場所だった。

 当日は仙台、東京からも演劇仲間らが駆け付ける。もちろん地元の演劇祭の仲間たちも2人を祝福するために集う。

 震災は多くのものを奪った。でも失うばかりでなかった。新しい力を街中に生みだしてきた。演劇祭もそうだ。人と人の新たな縁が生まれた。

 30日、運命の縁で結ばれた2人の趣向を凝らした“演劇祭”が幕を開ける。祝祭に立ち合ってきたい。

(久野義文)

【2018年6月28日(木)石巻かほく掲載】


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)