宝の森(相沢美紀子)

水紋

 うっそうとした森を進むと、明るい日差しが降り注ぐ。見上げると小屋がいくつも建ち、ブランコが揺れている。ドラム缶のお風呂や、廃材を組み立てたピザ釜もある壮大な秘密基地だ。

 東松島市の阿部雄さんが大塩地区に趣味で作った「キャンプ場」は、荒れ果てた実家の山を30年余りかけて手入れしてきた。日が当たり、風が通るに連れて、モミジやヤマユリ、山菜類など多様な植物が顔を出したという。

 木々がひしめく音を聞きながら、コーヒーを頂いた。JR矢本駅から車で十数分。こんなにぜいたくな空間が街のそばにあるなんて、思いもしなかった。

 阿部さんは言う。「ここは特別な山じゃなくて、どこにでもある普通の山だよ」。耳が痛かった。実家の裏に雑木林があるが、長年手つかずだ。わが家に限らず担い手不在の放置林は、地方の「お荷物」になっている。

 「俺が死んだらどうするかって? みんなそればかりだ」と笑う。「まずは2本の木にロープを渡してブランコを作ってごらん」。子どもたちが喜んで遊べば、大人も集い、下草を刈ったり、不要な枝を落としたりして、安全に遊べる場を整える。それが里山に手を入れる第一歩だと言う。

 カエルの卵を見に行ったり、リスを追い掛けたりして林に入ったこともあったっけ。今すぐ何かを始めるのは難しいけれど、宝の山の原石と思ったら、「お荷物」が少し軽くなった気がした

(相沢美紀子)

【2018年6月21日(木)石巻かほく掲載】


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