短歌(6/16掲載)

短歌

【佐藤成晃 選】

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「まだ若い」と都合に合わせて「老いたり」と生きぬくための老いの口ぐせ (石巻市羽黒町・松村千枝子)

【評】「二枚舌」という言葉がある。自分の都合に合わせて、平気で言い逃れをするずるい人を指していう。この作品での「口ぐせ」は「二枚舌」に近い生き方か。老いの身を生かすための方便として「ああ言えばこう言う」生き方を肯定しようとする老人の「かわいい」身勝手さを詠んだもので、許してやりたい気にさせてしまう佳作だ。ちょっとした心動きを逃さずに作品化できた技はなかなかのものです。

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薔薇(ばら)の芽に棘描(とげか)き足せば意志を持ち描きこむほどに光をこぼす (石巻市桃生・佐藤国代)

【評】薔薇の花を詠うことは、生活の実態を詠うよりもはるかに難しい。驚くほどの事件があるわけでは無いからだ。花の美しさを「美しい」と詠んだだけでは歌にならない。事がらで無く、「表現」だけで、「言葉」だけで勝負しなければならない。短歌の歴史や国文学の修辞についての知識も要求されることが多い。掲出歌は「美しい」などとは一言も言ってないが、美しい薔薇のイメージを読者の頭に描いてくれている一首。

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ときどきは飯を炊くさへ忘るるが主夫歴すでに八年を越ゆ (石巻市恵み野・木村譲)

【評】短歌の形式は古いものだが、内容はその時代の世情を反映しているものが多い。「ジェンダーフリー」「共働き」「イクメン」などという言葉を見ると、その時代が思い出される。この作には「主夫」という言葉が使われている。男は仕事、女は家庭という日本の長い慣習が変容していく様を捉えている言葉たちだ。この作品の場合は、そうせざるを得なくなった家庭の事情などへも配慮しながら読むべきだが、どんな「言葉」で作歌するかは大事なポイントである。

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寝ぼけたる眼こすれば聞こえます幻聴なるや亡妻(つま)のはな唄(うた) (東松島市大曲・阿部一直)

父母の十日ちがいの命日はわが生日を間に挟む (石巻市駅前北通り・庄司邦生)

耳遠き我とは知らぬ友の声聞き難けれど聞き返しせず (石巻市中央・千葉とみ子)

海の上に文法などはなかりけれ短歌(うた)が浮かべば迷ひて記しき (石巻市駅前北通り・津田調作)

さざ波をたたえて寂し水張田(みはりだ)の田植えの唄の絶えて久しも (石巻市丸井戸・佐々木あい子)

津波浜を駆ける部活の中学生イノチ眩(まぶ)しい海の夕焼け (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

柔らかくほころぶ笑みの友のいて愚痴(ぐち)を吐き出す乙女のごとく (石巻市八幡・松川とも子)

今日もまたキャラクター一ぱいの送迎バス笑顔の園児ら手を振りて過ぐ (石巻市南中里・中山くに子)

窓際(まどぎわ)の茶房の椅子に背をあづけ傍観者とふ透明人間 (石巻市開北・星雪)

天空よりしたたりて咲く<滝桜>三度巡りて三度打たれき (石巻市蛇田・千葉冨士枝)

摘みたての苺(いちご)を持ちて友が来ぬ粒に色合い笑いも添えて (石巻市須江・須藤壽子)

公園の仮設住宅取りはらわれガランとなりぬ空もあき地も (石巻市向陽町・鈴木たゑ子)

風車ピンクと白がくるくると猫除(よ)け鳥除け陽も回りだす (石巻市門脇・佐々木一夫)

集いたる年に一度の早苗振(さなぶり)に豊穣(ほうじょう)願いて盃(さかずき)交わす (東松島市矢本・奥田和衛)

車窓よりの景色たのしむ老い仲間日帰り旅の春の岩手路 (女川町・木村くに子)

夫逝きて犬と猫との生活に同居はじめるつばくら一家 (石巻市高木・鶴岡敏子)

風さそう五月の空を眺むれば人恋う心乱れるばかり (石巻市三ツ股・浮津文好)

【2018年6月16日(土)石巻かほく掲載】

■作品を募集中

 短歌、俳句、川柳を募っております。皆さんの力作をお寄せください。

 募集要項は次の通りです。

 短歌、俳句、川柳とも必ずはがきを使い、1枚に3首・句まで。いずれも自作の未発表作品に限ります。作品は返却しません。

 作品と同じ面(裏面)に氏名(筆名の場合は本名も)・住所・年齢(学年)・電話番号を記し、〒986-0827石巻市千石町4の42、三陸河北新報社編集部・文芸係(短歌、俳句、川柳を明記)まで。連絡先は0225(96)0321。


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