ささいなこと(白幡和弘)

水紋

 車を運転中、ルームミラーに映る後続車が気にならないだろうか。

 先夜のことだ。宮城、岩手県境付近を車で走行した。後方から速度を上げて車が近づく。ぴたりと追従するかと思いきや、離れる。車間距離が不安定だ。今や社会問題の「あおり」による危険運転が、頭をよぎった。

 走行ルートを思い返すが、トラブルのような場面はなかった。それは自分の思い込みで、ささいな事でも相手には気に障ることがある。

 後続車は相変わらず不規則な動きだ。目の前に待避所のスペースが現れた。車を乗り入れ、止めた。ところが後の車も続いて、停車したのだ。

 車がしつこく付きまとうかつての映画が現実に思える。得策ではないと考えつつも、車外に出た。最悪のケースも想定し、後方の車に近寄った。

 運転席は、勝手に想像したごつい男でなく、若い女性がいた。表情はおびえ、固まっていた。口から何やら糸状のものが数本垂れ下がる。涙目だ。そうだろう。突然のおやじの出現に面食らったようだ。この場に至った経緯を丁寧に説明した。

 すると彼女いわく、空腹が我慢できず、先行車の尾灯に目をやりつつ時折、好物の焼きそばを食べながら運転していたという。確かに右手にはしを持ち、食べかけの麺が助手席にあった。

 ささいな始まりがあおり運転やいざこざへと発展するのだろう。時間にして15分足らず。精神的に膨大なエネルギーを費やし、徒労感だけが残る夜だった。

【2018年6月14日(木)石巻かほく掲載】


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