短歌(5/19掲載)

短歌

【佐藤成晃 選】

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菜の花の黄色と青空サンドしてインスタ映えする今日を切りとる (東松島市矢本・千葉楓子)

【評】「サンドする」はいかにも和製英語。「サンドイッチのように挟む」という意味かと思う。加えて昨年の流行語大賞を取った「インスタ映え」。「写真映え」ともいう。一眼レフなどではなく、スマホで気軽に撮影を楽しむという雰囲気で使用する言葉だ。「菜の花」と「青空」を取り込んで今日一日の傑作の一枚をスマホのカメラで撮り終えた作者の楽しみ方が目に見えるようだ。新しい言葉が生き方の新しさをとらえている例だと思う。

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迷いつつ闇を手探り来し我の思いもよらず短歌(うた)に出会いき (東松島市大曲・阿部一直)

【評】スマホの「インスタ映え」とはまるで異なる視点で人生を詠みとった一首である。闇の中を手探りするようにして生きて来た自分だが、なんのはずみであったか、「短歌」に出会った。その結果どうであったかという答えまでは詠んでいない。書かなくても分かってもらえるからだ。この一首のような味わい深い作品を詠むまでになった。短歌に出会ってよかったという思いに満たされているのではないか。

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数センチの電子辞書にてうぐいすの谷渡り聞く指一本で (石巻市八幡町・松川とも子)

【評】電子機器の便利さはもう手放せない。指一本でうぐいすの谷渡りまで聞くことができるのだ。作者は電子辞書のディスプレーを開き、指一本で文字キーを打っているのだろう。言葉の「意味」を検索するのが辞書の大きな機能だった時代があった。その辞書が変容して、大人を楽しませてくれる上等の玩具にもなってしまった。時代とともに変わる環境に身を添わせ、静かに楽しんでいる生き方が見える作品である。

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川岸に青葦揺らす影見えず声かしましくヨシキリの啼(な)く (石巻市駅前北通り・庄子邦生)

木立ち縫う霧おだやかに流れ行く土の息吹をかすか残して (石巻市蛇田・梅村正司)

連翹(れんぎょう)の燃え立つ色に誘われてつい四、五千歩下肢(かし)は痛めど (石巻市南中里・中山くに子)

帰り路に照るLEDを見上ぐればぽわあと月は昭和のままに (石巻市開北・星雪)

振り向けばいまだに海が恋しかり乗りたる船も魚の群れも (石巻市駅前北通り・津田調作)

語り部の水主(かこ)衆を語る伝説に思いはせつつ松島にあそぶ (仙台市青葉区・岩渕節子)

イベントのある時だけの賑(にぎ)わいはなぜか寂しい町の復興 (女川町・木村くに子)

人波に押されて笑う老い二人袖触れ合うは心楽しも (石巻市丸井戸・佐々木あい子)

五月には孫に子が出るきっと出る急(せ)くなころぶな関東南部に (石巻市めぐみ野・木村譲)

故郷より移植のリラは花盛り津波に耐えて五十八年 (石巻市大街道・宍戸珠美子)

ひとところ地域住民の列長し集団検診センターの前 (女川町・阿部重夫)

次々と変わりゆくバスの料金表財布の小銭まさぐり始む (石巻市羽黒・松村千枝子)

『震災のうた』取り寄せて読み終えぬまざまざ浮かぶあの夜の雪 (石巻市高木・鶴岡敏子)

食べきった頃によそから又届く旬の筍(たけのこ)贅沢(ぜいたく)気分 (石巻市向陽町・中沢みつゑ)

夫送り一人娘を嫁がせし友は告げ来ぬ透析の身を (石巻市中央・千葉とみ子)

好物のホヤを供えて問いてみればお酒があればと笑顔に見える (石巻市須江・須藤壽子)

草萌えてパターゴルフに集う老い五体はじけて悲喜こもごもと (石巻市不動町・新沼勝夫)

【2018年5月19日(土)石巻かほく掲載】

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