短歌(5/5掲載)

短歌

【佐藤成晃 選】

===

生きていく我が自叙伝の歌いくつ老いの呟(つぶや)き老いのたわ言(ごと) (東松島市大曲・阿部一直)

【評】自分の短歌は、老いの「呟き」や「たわ言」に過ぎないという。とは言っても、短歌は生活から生まれ出るものだから、長い間継続して励めば、それは自分の或(あ)る期間の歴史にもなろう。作者が「自叙伝」というのはそんな考えをいうのだろう。一見謙遜の言い方をしながら説得力が感じられるのは、作歌を続けてきた経験に自信を持っているからだろう。呟きやたわ言こそもっとも人間の本心が出てしまうものかも知れない。嘘のない「自叙伝」だ。

===

おそらくは新車を孕(はら)む沖の船仙台港出て春の海航(ゆ)く (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

【評】県内の工場で作られる自動車が仙台港で船に積まれ、方々へ運ばれていくことはニュースにもなった。作者は今仙台港の岸壁に立って沖に浮かぶ船を見つめているのだろう。積まれた自動車のために船倉が膨らんで見えたのだろうか。それを「新車を孕む」と描写している。眼前の船を見ての驚きがこのような言葉になったのだろう。「春の海航く」がゆったりとした気分をだしていて、まぶしい春の海を行く船の豊かさを感じさせてくれた。

===

諦めて臥(ふ)したる部屋は白き壁泣けとごとくに灯りがひとつ (石巻市駅前北通り・津田調作)

【評】「臥したる部屋は白き壁」から病室を想像する。医師や家族に説得されて、しかたなく入院したいきさつが想像できる。夜は「灯りがひとつ」しかない病室。「寂しかったら泣け」と言われているような気持ちになった。応募のはがきには「荒波に逆らい生きし性格(さが)なれば白きベッドに涙を見せず」の一首もあった。海の仕事に生きた昭和の男の意地がにじみ出てくるような一首。快癒を祈る。

===

桜舞うブルーシートに正座して「ここはどこか」と笑みて問う母 (石巻市大門町・三條順子)

しあわせは娘(こ)のひざ枕耳かきの外はちらほら春の雪降る (仙台市泉区・米倉さくよ)

帰るさの運転するは息(こ)と決めて婚の記念の祝杯挙げぬ (石巻市駅前北通り・庄司邦生)

母の命日(ひ)に兄弟姉妹一列に九人坐れり生まれし順に (石巻市相野谷・武山昭子)

花吹雪散りしく川面を列なしてかる鴨が来る花を縫いつつ (石巻市南中里・中山くに子)

大空を昇れる鯉は六百匹青き水底天に持ち上ぐ (石巻市丸井戸・佐々木あい子)

友の家の零(こぼ)れ桜の下(もと)に寄り病気(いたつき)忘る同期の笑顔に (石巻市桃生町・三浦多喜夫)

若駒の草食(は)むしぐさの美しや朝の光を背(せな)に受けつつ (東松島市矢本・雫石昭一)

玄関に飾りし小さな鯉のぼりいろ紙折りて五匹泳がす (石巻市中央・千葉とみ子)

春来れば朝の仕事の雨戸開け夫の役割ひとつが減りぬ (石巻市向陽町・鈴木たゑ子)

真新しい頭巾の奥の慈悲の笑み地蔵菩薩(ぼさつ)に手を合わすなり (石巻市丸井戸・高橋栄子)

北上川(きたかみ)の流れに沿いて花咲けばわれは吟ずる西行の歌を (石巻市中里・鈴木きえ)

百歳の健康長寿に日々いどむ三日坊主にならぬ覚悟で (石巻市不動町・新沼勝夫)

菜っ葉飯(めし)昔なつかし今はもう満ち足りた世に感謝ひとしお (石巻市桃生町・高橋ふぢ)

野も山も新たな芽吹きの此処彼処(ここかしこ)春告げ鳥のやさしきひびき (石巻市飯野・川崎千代子)

枕辺に織りし娘の千羽鶴胸にいだけば羽ばたくごとし (石巻市新栄・菅野たみ子)

風薫る五月の大気を深く吸い老いに真向う力満たさん (石巻市蛇田・千葉冨士枝)

【2018年5月5日(土)石巻かほく掲載】

■作品を募集中

 短歌、俳句、川柳を募っております。皆さんの力作をお寄せください。

 募集要項は次の通りです。

 短歌、俳句、川柳とも必ずはがきを使い、1枚に3首・句まで。いずれも自作の未発表作品に限ります。作品は返却しません。

 作品と同じ面(裏面)に氏名(筆名の場合は本名も)・住所・年齢(学年)・電話番号を記し、〒986-0827石巻市千石町4の42、三陸河北新報社編集部・文芸係(短歌、俳句、川柳を明記)まで。連絡先は0225(96)0321。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください