コミュニティー(白幡和弘)

水紋

  東日本大震災後、災害公営住宅などで新たなコミュニティーが形成されつつある。被災地域ごとの集団移転ならば長い付き合いの顔見知りも多い。円滑に移行できるとは思う。見ず知らずであれば、ゼロからの近所付き合いだ。プライバシーもある。実に難しい。

 転勤でいくつかの地域で暮らした。一戸建てはあったが、大半は民間集合住宅だった。集合住宅で家内は趣味を通して親しい友人を得ていたが、自分はと言えば交流の機会はほとんどなかった。

 通路やエレベーターで顔を合わせればあいさつはする。だがそこで終わってしまう。隣の部屋に誰が住んでいるのか。分からない事が多かった。

 震災で近所付き合いが深まれば、逆に疎遠になったケースもある。境界線は何だったのか。助け合いと協調、そして思いやりの心を持ち合わせていたかどうかだと思う。

 県北沿岸地域でのことだ。震災で断水した。住民は沢水をくみ、まきを燃やし、煮沸消毒しながらしのいだ。そこに待望の給水車が来た。だが1人のご婦人が駆け寄り「ここはいらない」と断り、追い返そうとした。隣近所の人は給水担当者に懇願し、何とかすぐに飲める水にありつけた。信じられないが、事実だ。

 ご婦人は独自ルートで飲料水を調達していたという。他も大丈夫と判断したのか。ご婦人はこの春、地区自治会から脱会した。それでも自治会設置のごみ集積所に、家庭、事業系のごみを混ぜ合わせて持ち込みを続けている。 

【2018年4月19日(木)石巻かほく掲載】


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