新しいまち(河北新報社石巻総局・今里直樹)

水紋

 新しい街並みや新しい住宅群を、これほど広範囲に目にしたことがあっただろうか。石巻市に住み始めて約1週間。東日本大震災前の風景をよく知らない身として、目を見張る思いだ。

 復興まちづくり情報交流館中央館で震災当時の話を聞いた。中心部の浸水被害、市全域の被災状況、そして門脇地区の出来事。いずれも報道で知っていたことだが、被災地で聞く言葉は重く、胸に沈み込んだ。

 発生当時、宮城県庁3階の記者室を拠点としていた。直後から県全域の被害状況が庁内の災害本部に集約された。橋崩壊、建物倒壊、死者多数…。「鮎川地区壊滅」という連絡があった際は意味が飲み込めず、何度も聞き返した。

 県庁に数日間泊まり込み、押し寄せる情報に翻弄(ほんろう)された。省みるに、自分にとっての震災直後の取材は、現実と乖離(かいり)した「統計」の作業だった気がする。

 現場はいかばかりだったか。家族を失った被災者の涙も見ず、避難者の叫びも聞かず、ヘドロの匂いも感じずにその時を過ごした事実は、深い悔いとなって胸に巣くう。

 石巻圏内で目にする新しい街並みは、壮絶な過去を経てたどり着いた先なのだろう。そして、いまだ多いプレハブ仮設住宅は、非常時が現在進行形である現実を厳しく突き付けてくる。

 新年度、石巻に赴任した。この地域がどこに向かうのか。記者として、住民として、見詰め続けたい。

(河北新報社石巻総局・今里直樹)

【2018年4月5日(木)石巻かほく掲載】


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