短歌(3/24掲載)

短歌

【佐藤成晃 選】

===

孫に送るもう満杯の荷の隅へどこにでもあるヤクルト二本 (石巻市羽黒町・松村千枝子)

【評】孫の歌は難しいという。「かわいい」という気持ちが前面に出てしまうからかもしれない。この作は、「かわいい」という言葉を使わずに「かわいさ」を漂わせていて味わい深い佳作である。荷造りした荷物のわずかな隙に「どこにでもあるヤクルト二本」を詰め込む作者の行動が、読者に孫のかわいさを想像させる働きをしているのだろう。どこにでもある飲食物を詰め込まざるを得ない祖母の思いがよく出ていて魅力的な作品。

===

霜柱踏めば幸せ逃げそうで遠回りして家路をいそぐ (石巻市相野谷・戸村昭子)

【評】「霜柱を踏めば不幸になる」などの俚言(りげん)があるわけではないだろう。大自然が一夜をかけて作った霜柱を踏み潰すことにちょっとした罪悪感らしきものを感じているのだ。そこで作者がとった行動は「遠回り」することだった。実益の伴わない行動で自分の生き方を貫き通したところに生まれた「純」な世界を思わせる一首。歌を作る楽しい一面を見せてくれる作品でもある。

===

ひたすらに風雪蹴散らし突っ走る石狩平野の網走本線 (石巻市わかば・千葉広弥)

【評】冬の北海道を旅した時の作品だろうか。下の句「石狩平野の網走本線」という骨太の重い言葉が、吹雪の中を突進する列車の力強さを押し出す働きをしているのかもしれない。「蹴散らし」「突っ走る」を「ひたすらに」で修飾しているところなど、やや言葉に寄りかかっているともとれるところだが、冬の北海道の風物詩をよく歌い切った佳作である。欲を言えば、作者が作品の中で「行動する」作品でありたい。

===

残された者の悲しさ淋しさを妻は知らずや一人逝きたり (東松島市・阿部一直)

あの人がいたので今があると思(も)う幾たり浮かぶ夜半に目覚めて (石巻市駅前北通り・庄司邦生)

ばっさりと伐(き)られし幹に細き枝出して咲きたる白梅二輪 (石巻市向陽町・鈴木たゑ子)

夫在(あ)らば六十回目の記念日なり供花(くげ)はなやかに酒も供えぬ (石巻市中央・千葉とみ子)

亡き夫の逝きたる齢(よわい)すでに過ぎ独(ひと)りたつきのいつまで続く (石巻市大街道・宍戸珠美子)

意を決してベビーダンスを求めたり開け閉めのたび香る楠(くすのき) (仙台市青葉区・岩渕節子)

風邪ゆゑに施設へ行けぬひと月に母のまなざし我に止まらず (石巻市開北・星雪)

ふかぶかの新雪踏みし靴跡に重ねて歩む長靴なれど (石巻市八幡・松川とも子)

列なして昇天続けた御霊星あの日の夜は涙の雪降る (石巻市丸井戸・高橋栄子)

小雨降る葦(あし)の河原の北上川(きたかみ)に溶けし白雪濁りて速し (石巻市門脇・佐々木一夫)

新聞のレシピ片手にスーパーへ 妻の旨(うま)いに辿(たど)りつけない (石巻市恵み野・木村譲)

春待ちの長きひと日にペン持ちて庭に出(い)ずれば福寿草の花 (石巻市駅前北通り・津田調作)

ふる里の空恋しくて庭に立つ老いの背中に春の淡雪 (仙台市泉区・米倉さくよ)

特Aにランクされたや「ひとめぼれ」温湯処理の種籾(たねもみ)届く (石巻市桃生町・三浦多喜夫)

今角を曲がる右折車のようにウィンカー越しで知りたい答え (東松島市・千葉楓子)

鉢植えの七年の桃咲きし朝今日と言う日を空につぶやく (東松島市・雫石昭一)

お互いに八十路(やそじ)を過ぎた今なれば寝息をうかがい又夢に入る (石巻市吉野町・伊藤敏子)

【2018年3月24日(土)石巻かほく掲載】

■作品を募集中

 短歌、俳句、川柳を募っております。皆さんの力作をお寄せください。

 募集要項は次の通りです。

 短歌、俳句、川柳とも必ずはがきを使い、1枚に3首・句まで。いずれも自作の未発表作品に限ります。作品は返却しません。

 作品と同じ面(裏面)に氏名(筆名の場合は本名も)・住所・年齢(学年)・電話番号を記し、〒986-0827石巻市千石町4の42、三陸河北新報社編集部・文芸係(短歌、俳句、川柳を明記)まで。連絡先は0225(96)0321。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)