短歌(3/10掲載)

短歌

【佐藤成晃 選】

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来し方を茶請(う)けに老妻(つま)とティタイム ストーブの側に蜜柑むきつつ (石巻市蛇田・菅野勇)

【評】これまで苦労を共にしてきた妻とのティタイム。その「お茶請け」はこれまでの苦労話だという。苦労話が酒のさかなになる図と重なる。思い出すのも嫌な過去だってあったはずだが、ある年齢に達してみると苦労の絶えなかった過去も肯定できるようになるのだろうか。現在の生活に納得できる何かがあっての過去の肯定なのだろうが、下の句がその辺りのニュアンスを伝えていて気持ちよく読める作品となった。

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手さぐりて闇を行くごと来し我の夢に楽しむ自叙伝歌集 (東松島市・阿部一直)

【評】毎回の佳作に感銘。闇の中を手探りで生きるような苦しい人生を紡(つむ)いできての現在。幸いに短歌を作る楽しみを身に着けることができた。一冊でもいいから自分の歌集を作りたいと思いながら、その実現の簡単でないことを知っている作者。だが、どうすればいいかの解答も作者は知っている。「夢に楽しむ自叙伝歌集」が答えだ。歌集そのものが自分の自伝になる一冊を夢見る。「自叙伝歌集」と重い体言で詠み切ったところが余計感動を呼ぶ。

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如月(きさらぎ)のカレンダーめくればまた写る影絵となりしあの弥生雪 (石巻市駅前北通り・津田調作)

【評】2月のカレンダーをめくれば3月。あの3月に心が騒立つ。悲惨なあの3月の毎日が思い出されてならない。やや記憶の淡くなってしまった部分が出てきたとしても、あの阿鼻叫喚(あびきょうかん)は、忘れてはならぬという道徳とは別に思い出すのもためらわれるものだ。耐えてきたこれまでの経過が形を変えながら、濃淡を変えながら思い出される3月。

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大川の子らと教師と保護者らと止まりし刻(とき)の会話また掘る (石巻市恵み野・木村譲)

雨晴れて規格同じき住宅に干せる衣類の家それぞれに (石巻市駅前北通り・庄司邦生)

久方に頭の付いた鰹(かつお)買う一本釣りしたあの日に戻らん (石巻市門脇・佐々木一夫)

平昌に日章旗昇りて感涙すメダルの他に「そだねー」も生みて (東松島市・奥田和衛)

カーリング笑みを貫き三時間九死の一投≪銅≫を勝ち取る (石巻市南中里・中山くに子)

うっすらと歩道に積もりし雪蹴りて追いつ追われつ子ら走り行く (石巻市丸井戸・松川友子)

先生と呼べる恩師がいることを我実感す手紙届きて (東松島市・千葉楓子)

救難の緩慢ロープ上下する時化(しけ)の最中(さなか)のヘリ-の救助 (女川町・阿部重夫)

我が短歌(うた)に共感しくるる人増えて会えば「見たよ」で始まる会話 (石巻市向陽町・中沢みつゑ)

老いとまでゆかぬがそれに近きもの少しずつ指に触れはじめたり (石巻市桃生町・佐藤国代)

雪の匂い霜の匂いを漂わせ眠れる父よ野を駆けいるか (石巻市蛇田・千葉冨士枝)

番傘の重み忘れぬ昭和の子昔むかしがよみがえる雪 (石巻市大門町・三條順子)

津波来てわが家の位置を知らされぬこんなに海に近かりしこと (多賀城市・佐藤久嘉)

身から出た錆(さび)とはいえどかなしけれ暖なき房は骨まで凍る (石巻市小船越・浮津文好)

雨なれど合羽(かっぱ)を着けて歩き出す万歩の道が途切れぬように (石巻市清水町・岡本信子)

「やってみようかな」の「な」を取り「か」を取りて「やってみよう」に我出来あがる (石巻市開北・星雪)

そら奔(はし)る雲脚(くもあし)たちまち地に降りて疾風となりて水面駆(かけ)る (石巻市蛇田・梅村正司)

【2018年3月10日(土)石巻かほく掲載】

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