食わず嫌い(河北新報社石巻総局・水野良将)

水紋

 ほぼ毎日、納豆を食べている。よく食べるようになってから病気になることが減り、精神的に粘り強くなったと思う。

 幼い頃は納豆のあの独特な臭いが苦手だった。小学校の給食の時間、教室の窓から外に顔を出して空気を吸い、何とか臭いに耐えていた。

 転機は20代前半の冬に訪れた。八戸市で仕事を終えて入ったすし店。「お任せでお願いします」。出てきたすしの中に納豆巻きがあった。これは困ったな…。お任せした手前、意を決して食べた。「あれ、うまいな」。不思議と臭いが気にならず、追加で納豆巻きを握ってもらった。

 「食べた」後に遠ざけたケースもある。外国人作家の小説がその一つ。

 中学生の夏休み、米国の作家アーネスト・ヘミングウェーの「老人と海」を読んだ。作者が何を伝えたいのかうかがい知れず、宿題の感想文は大半が粗筋をなぞっただけだった。

 それでも昨年、外国人作家の作品に近づく好機がやって来た。

 長崎市生まれの英国人小説家カズオ・イシグロ氏。専門家の高い評価に興味をそそられ、代表作「日の名残(なご)り」「わたしを離さないで」などを手にした。冷静で穏やかな筆致。読むのに適度な情報量。記憶の不確かさや過去とどう向き合い、生きていくべきか。多くのことを学び、考えさせられた。

 「食わず嫌い」を克服すると、人生が豊かになる気がする。さて、今年は何を食べてみよう。

(河北新報社石巻総局・水野良将)

【2018年2月13日(火)石巻かほく掲載】


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