短歌(2/10掲載)

短歌

【佐藤成晃 選】

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なりも振りもかまわず来たる忍従の日々に詠(うた)いし我が短かうた  (東松島市・阿部一直)

【評】組織の中で生きるかぎり、「忍従」はつきものだ。ことに青年時代は理不尽な忍従さえも強いられたりするものだ。そんな忍従の中にありながら「短歌」を手放さなかったことを思い出として持っている現在の自分の幸せを作者はしみじみと味わっているのではないか。不平・弱音・弁解などいろいろあったが、それらを文字に転換できたことは、人生体験として貴重なものであるに違いない。この欄の読者は次回の作品にも期待している。

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雪掻きに長靴はけば元漁師身は老いたれど気負いは壮年  (石巻市駅前北通り・津田調作)

【評】突然の雪。何とかしなければと思い、ゴム長靴に足を入れた。とたんに若かりしころの心意気がよみがえる。昔の「きねづか」だ。肉体は老いてしまったが気力はまだまだの心意気なのだろう。漁船時代に履いていた長靴に足を入れた瞬間に肉体が反応してしまうところをうまく掬いとった作品。「気負いは壮年」と体言止めに言い切ったところも心の姿勢の良さを思わせて見事である。

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どっしりと大河北上腰すえて押し切るように大海原へ  (多賀城市・佐藤久嘉)

【評】スケールの大きな自然詠(叙景歌)。北上川が海へ流れ入る情景を「腰すえて押し切るように」と擬人法と直喩で詠み取った力作。ただ「どっしりと」「大河」「大海原」と並べてみると、やや言葉に凭(もた)れかかっている感じも否めない。いったん出来上がった作品に或る距離を置いて眺め直すことも作歌の楽しさであるはず。それには他人の作品を熟読することも必要なこと。御精進を。

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水道水を若水として今朝は汲(く)む昨日と違う清(すが)しさ匂う  (石巻市羽黒町・松村千枝子)

出張の息(こ)の先々は雪マーク ニュースのたびに耳目そらせず  (石巻市向陽町・中沢みつゑ)

遠き日に吾子(あこ)に歌いし子守歌眠れぬ夜は我がため歌う  (石巻市大街道・宍戸珠美子)

『九十歳。何がめでたい』読み終えぬその九十に向かわんとする  (石巻市向陽町・鈴木たゑ子)

長男も次男もあらむ「てんでんこ」津波ばかりと言ふな平成  (石巻市恵み野・木村譲)

震災前チャキンだけ売る和菓子屋さん昭和が匂いしおばちゃんの店  (石巻市八幡町・松川とも子)

口中の飴(あめ)とけるまで三十分ウオーキングは今日も鎮守に参る  (石巻市中央・千葉とみ子)

とりどりの残菜まとめし一品をスマホに学ぶその名はドリア  (石巻市南中里・中山くに子)

白障子凛(りん)として建つ有備館池めぐる庭霜柱立つ  (石巻市相野谷・戸村昭子)

あの枝が景色壊すと眺めおり天を衝(つ)く枝切らんと思う  (石巻市門脇・佐々木一夫)

「すまないネ」夫の言葉にほだされて老老介護の日々歩みきぬ  (石巻市相野谷・武山昭子)

初めての美容師にゆだね鏡見る女性よりなおしなやかな指  (石巻市丸井戸・松川友子)

ふる里の空なつかしく庭に立つ月出ぬ宵も星なき夜も  (仙台市泉区・米倉さくよ)

さらさらと笹面を滑るこごめ雪夜の無音に訪れ告げる  (石巻市蛇田・梅村正司)

ディサービス見知らぬ人との会話あり心を開く友となりゆく  (石巻市鹿又・高山照雄)

女房にやさしくされしその日には清(すが)しき心で短歌(うた)が生まれる  (東松島市・奥田和衛)

老い二人風呂に声かけ枕辺に水を汲み置き年を寿(ことほ)ぐ  (石巻市桃生・千葉小夜子)

【2018年2月10日(土)石巻かほく掲載】

■作品を募集中

 短歌、俳句、川柳を募っております。皆さんの力作をお寄せください。

 募集要項は次の通りです。

 短歌、俳句、川柳とも必ずはがきを使い、1枚に3首・句まで。いずれも自作の未発表作品に限ります。作品は返却しません。

 作品と同じ面(裏面)に氏名(筆名の場合は本名も)・住所・年齢(学年)・電話番号を記し、〒986-0827石巻市千石町4の42、三陸河北新報社編集部・文芸係(短歌、俳句、川柳を明記)まで。連絡先は0225(96)0321。


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