短歌(1/13掲載)

短歌

【佐藤成晃 選】

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夫は申われは戌年犬猿の二人が添いし五十八年 (石巻市中央・千葉とみ子)

【評】「いぬ年」生まれの作者と「さる年」生まれの夫。暦用の「戌」と「申」の語を生活用語に置き換えてみれば「犬猿」だ。この獣たちは「不仲」の代名詞みたいな言葉だ。そこから生まれた言葉が「犬猿の仲」という慣用語だ。さて、作者たち夫婦はそれぞれ「不仲」を背負わされた「犬年」と「猿年」の生まれだが、連れ添った年数は五十八年間という。その幸せを力を入れないで詠った佳作。

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千羽鶴折るは祈るに似てもおりもどらぬものはかえらぬものか (石巻市大門町・三條順子)

【評】津波からもどって来なかった誰かを思って折り続ける千羽鶴だろうか。「折る」ことは「祈る」にも通じる何かがあるのだと悟った作者。祈りの込められていない鶴など無いはず。文字の形も何となく似ている二つの漢字だ。この歌は下の句が難しい。すべて「ひらがな」で表記したのは、つぶやきにも似た言葉だったからかもしれない。普通に書けば「戻らぬ者は帰らぬものか」だ。「者」は人をさし、「ものか」は嘆きの心情をこめた静かな叫びか。3.11が重なる。

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餅搗(もちつ)きの臼を囲みて家族らが御強(おこわ)を待ちし昭和がありき (石巻市南中里・中山くに子)

【評】「昭和がありき」の結句から、昭和がずいぶんと遠くなったような印象を受ける。お餅をつく土間で臼に移されるときのお強の御こぼれをもらう風習みたいなものがあった。もうもうと湯気だつ小皿の上のお強にちょっと塩をかけて食べるのが美味しかった昭和。母の「あいどり」の声が聞こえてきそうだ。

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書初めの賀状を捨てて喪に走る大き夢連れ逝く甥(おい)はやし (石巻市恵み野・木村譲)

瓦礫(がれき)山七日捜して手にせしは泥にまみれた葉書一枚 (東松島市・雫石昭一)

また一つ歳を背負いて妻も吾も照る日曇る日杖となりつつ (石巻市駅前北通り・津田調作)

健康と言う文字ならぶ年賀状したためる我も「健康」を書く (石巻市丸井戸・高橋栄子)

ほつほつと山茶花咲けば筑波嶺(つくばね)のふもとの里の垣根思ほゆ (石巻市駅前北通り・庄司邦生)

寒風にも負けずに歩く六千歩膝かばいつつ内海橋渡る (石巻市八幡町・松川とも子)

正月の餅切るときの包丁は大根切りて粘りを防ぎ (東松島市・奥田和衛)

買い物は特になけれどスーパーに友と語らう短き冬の日 (石巻市大街道・宍戸珠美子)

初雪が八方無尽に迫り来れば念仏唱えハンドル握る (石巻市須江・須藤壽子)

小学のころまで共に風呂に入れ育てし娘いまはいずくに (石巻市小船越・浮津文好)

拙作(せっさく)はボツになりしと思いつつもしやもしやと開く朝刊 (石巻市和渕・丁子タミ子)

晴れ間みて散歩に出でし田んぼ道北西風(なれ)強すぎる老いたる我に (石巻市鹿又・高山照雄)

おみくじは人にまかせよつつしめと松本城の教へ残りぬ (石巻市相野谷・戸村昭子)

しんしんと降る雪のなか古里の寺の鐘の音聞こえるごとし (仙台市泉区・米倉さくよ)

この頃は口開けたまま眠るらし朝目覚めれば喉かわきおり (石巻市丸井戸・松川友子)

某国は核を味方に吼(ほ)えまくる民の辛苦を置き去りにして (石巻市わかば・千葉広弥)

北上の土手の河原に炎立つ芦原熱く明日へと戦(そよ)ぐ (石巻市門脇・佐々木一夫)

【2018年1月13日(土)石巻かほく掲載】

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