新年の決意(久野義文)

水紋

 新年を迎えるたびに決意することがある。「今年こそは、チェーホフの作品を全部、読破するぞ」と。

 結果はいつも挫折。書棚にはチェーホフ全集が陣取っているが、最初から最後まで読んだのは何巻あるだろうか。戯曲や中編小説を除くと、ほとんどが短編。読むのに10分とかからない小品もある。それで、毎日1編ずつ読むことを課してみるが、3カ月と続かない。

 人間とは何と飽きやすい動物なのか。誘惑にも負けてしまう。話題のミステリー本や趣味の本になびいてしまう。いつしか書棚から手に取らなくなる。毎年、この繰り返しだ。

 誓いだけ立派で、途中で放棄してしまう心の弱き人間は、チェーホフの小説のモデルになりそうだ。いや、もう登場させているかもしれない。

 でも、チェーホフは、ダメな人間を高所から批判したりしない。たぶん「しょうもないな」と言ってほほえみ、まなざしは優しい。欠点だらけの人間たちを愛すべきキャラクターとして描き、そんな人間たちの世界を慈しむ。

 昨年、東京で見た、チェーホフの代表的な戯曲「ワーニャ伯父さん」に登場した人物たちも、ほとんどがダメ人間だった。あがいても、もがいても、ままならないのが人生。それでも生きていかなくてはならない。生きていこうと、励ますチェーホフがいる。そんな人間たちに会いたくなる。

 今年も本の生活はチェーホフから始まった。

(久野義文)

【2018年1月11日(木)石巻かほく掲載】


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください