短歌(12/30掲載)

短歌

【佐藤成晃 選】

===

再発の確率五割をぶらさげて二年五か月年あらたまる  (石巻市恵み野・木村譲)

【評】再発するかしないかは、作者個人にとっては百%か0%しかない。0%を願って緊張の日々が延々と続くだけだ。その緊張感と一緒にまた新しい年を迎える作者。ただ「ぶらさげて」からは、緊張を強いられながらも「くよくよしても仕方がない」というような、一面居直ったかのような気分が読み取れるところもあって味わい深い佳作。二年と5か月に及ぶ0%への祈りが本物になるように鑑賞者としても祈りたい。

===

十年ぶりに娘と逢いて坦々(たんたん)と「家族信託」の話も尽きず  (石巻市向陽町・鈴木たゑ子)

【評】「家族信託」は「信頼できる家族に財産を託す」こと。自分の老後を娘さんに託すための話し合いの場面であろう。「十年ぶりに」から、娘さんとは簡単に行き来することができない状況を想像する。ただ「坦々と」からは相談事がスムーズに運んでいることが思われるし、最後の「尽きず」は、十年ぶりに会ったことから話が弾んで尽きない様子をうかがわせる。高齢社会という世相を反映した説得力ある作品となった。

===

歌を追いうたに追わるる老いの日々たのしかなしや歌に救わる  (東松島市・阿部一直)

【評】一日中短歌のことを考えて過ごす作者。先人の名作を読んでは感動し、自作をひねっては苦しむ。そのことの繰りかえしの毎日だが、飽きることはない。結句の「歌に救わる」は重い。短歌の面白さを知ってしまった人にしか言えない言葉だ。文字(言葉)による表現手段が、どんなに自分を支えてくれるかは短歌の実作を続けている人にしか分からない秘薬のようなものだ。

===

公営の六階建てのマンションに喜怒哀楽の明かりが灯る  (石巻市蛇田・千葉冨士枝)

赤い柄(え)の歯ブラシ一本残りたり青の歯ブラシ施設に行きて  (石巻市羽黒町・松村千枝子)

数枚の異国の切手出でてきぬ遠洋船員たりし父の青春  (東京都狛江市・三上栄次)

落葉踏み寺前通りを帰り来ぬダウンコートに風孕(はら)ませて  (石巻市南中里・中山くに子)

炊きあげしサフラン飯の香りよし師走入りした今日の夕餉の  (仙台市青葉区・岩渕節子)

ケイタイの番号聞かれ咄嗟(とっさ)には思い出せない八十路(やそじ)の半ば  (石巻市中央・千葉とみ子)

孫が来て赤ベコの頭ポンと押す惚(ほお)けた顔を笑わすためか  (石巻市丸井戸・松川友子)

鉄砲の伝来の地と遠き日に学びし島を眼下に望む  (石巻市駅前北通り・庄司邦生)

来年は八十路の坂を登らんと己に聞かせ山畑に急(せ)く  (石巻市桃生・千葉小夜子)

かの海を望む港にぼんやりといつか還ると待つ常夜灯  (多賀城市・佐藤久嘉)

あの時は神など何処(どこ)と疑いしに祈れば今は神おわすよう  (石巻市渡波町・小林照子)

厳冬の陽を待ちゆるる庭草の青き葉先にまろき露あり  (石巻市丸井戸・佐々木あい子)

新米の香りと共に弟が里の香りを運んで来たり  (石巻市水明南・関谷慶子)

船に乗り嫁いだ我は早八十路三度の食卓嫁に頼りて  (女川町・木村いよ子)

「こんにちは」すれちがうたび挨拶すいまだ馴染めぬ越してきた町  (石巻市丸井戸・木村照代)

給料を取り上げられし義母なれど「ありがたう」と言ひて一人旅立てり  (石巻市相野谷・戸村昭子)

軒下の狭き花屋に立ち寄れば中はさながら春の香と色  (石巻市大門町・三條順子)

【2017年12月30日(土)石巻かほく掲載】

■作品を募集中

 短歌、俳句、川柳を募っております。皆さんの力作をお寄せください。

 募集要項は次の通りです。

 短歌、俳句、川柳とも必ずはがきを使い、1枚に3首・句まで。いずれも自作の未発表作品に限ります。作品は返却しません。

 作品と同じ面(裏面)に氏名(筆名の場合は本名も)・住所・年齢(学年)・電話番号を記し、〒986-0827石巻市千石町4の42、三陸河北新報社編集部・文芸係(短歌、俳句、川柳を明記)まで。連絡先は0225(96)0321。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)