秋、たけなわ。野山が赤や黄色のカーペットで覆われるようになりました。
「もみじ」の語源を探ると、秋に草木が赤や黄に変わることを古くは「もみつ」などといい、これが名詞化したのが「もみち」。やがて「もみぢ」さらには「もみじ」となったとのことです。
さて「紅葉(こうよう)」を英語でどう表すか…ひと言で表すのは難しい。赤や黄色の微妙な色彩ですから。
「葉」はおなじみ leaf 、その複数形は leaves 。それで red and yellow leaves(赤や黄色の葉)と表せないことはありませんが、葉の色がもともと赤や黄色という意味にもなりかねません。
「紅葉」は、「秋に色が染まった葉」と解釈できますから、ここから考えていきます。
まず、「秋」を表す英語が二つあることはご存知でしょう。
一つは fall(フォール)。これは主にアメリカで用いられ、“ fall of the leaf ”(葉が落ちる)に由来します。
もう一つは autumn(オータム)で、どちらかと言うとイギリス英語。詩的な感じを漂わせる語です。
「落ち葉」は fallen leaf(落ちた葉)と表します。ここから、「紅葉」は fall / autumn leaves(秋の葉)、fall / autumn colors(秋の彩り)などと表現できます。
また、鮮やかに紅葉するのはカエデ。英語では maple(メイプル)と言います。思い浮かべるのはカナダの国旗。赤白・赤の縦縞で、中央に赤いサトウカエデ sugar maple の葉が配置されている…このことから The Maple Leaf Flag(メイプルリーフ旗)と呼ばれています。
この季節、良寛さんの次の句を思い起こさずにはいられません。
「うらを見せ おもてを見せて散るもみじ」
日本人の美意識の極み、そう思います。
大津幸一さん(石巻専修大人間学部教授)
【2017年11月14日(火)石巻かほく掲載】