メリーさん(河北新報社石巻総局・鈴木拓也)

水紋

 日曜日の河北新報の読書欄で、懐かしいタイトルが目に飛び込んできた。

 その名は「ヨコハマメリー」。横浜市に実在した年老いた娼婦を追ったドキュメンタリー映画で、10年近く前に横浜市の映画館で見た。

 記事は、映画を手掛けた中村高寛監督が作品の舞台裏を書いた著書を紹介していた。映画のストーリーはおぼろげだったが、本を購入して読み進めるうちに当時の記憶がよみがえってきた。

 主人公のメリーさんはおしろいで顔を白く塗り、白いドレスの目立つ格好で街角に立っていた。地元では「ハマのメリーさん」と呼ばれる有名人。それが1995年に突然、街から姿を消す。

 監督が撮影を始めたのはその4年後。当初は交流のあったゲイのシャンソン歌手やクリーニング店のおかみのインタビューを通じ、メリーさんの人物像を浮かび上がらせる試みだった。

 しかし撮影を始めて約1年後、メリーさんの居場所が判明する。最後のシーンで老人ホームで晩年を過ごすメリーさんが登場すると、監督が製作に費やした時間を共有するような感動が胸にこみ上げてきた。

 劇場公開された2006年は入社1年前の大学生だった。就職活動真っ最中の時期。メリーさんを熱心に追う監督の執念や息遣いが、新聞記者を目指す自分にはすごく新鮮だったと覚えている。

 すっかり肌寒い秋の気候になった。読書で青春の一ページをめくるのも悪くない。

(河北新報社石巻総局・鈴木拓也)

【2017年10月24日(火)石巻かほく掲載】

◇映画「ヨコハマメリー」 http://hitohito.jp/


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