短歌(9/9掲載)

短歌

【佐藤成晃 選】

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軍馬とは知らぬ若駒(わかこま)勇みおりなだめ送りし父若かりき  (石巻市南中里・中山くに子)

【評】農耕馬が軍馬として招集された時代があった。馬も戦力の一端を担ったのだった。自分が軍馬として徴発されることなど知らない若駒の元気な姿が、父には悲しくてならなかったはずだ。父がまだ若い戦前(昭和20年以前)のことだ。その時代の軍歌に「愛馬進軍歌」という名曲があった。人馬が一体となって明日の戦さに備えるシーンなどが歌われていたことが思い出される。たくさんの兵隊が犠牲になったあの大戦から生きて帰ってきた馬は一頭もなかったという。

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点滴のしたたる音に目をやれば命繋(つな)げと一滴一滴  (石巻市門脇・佐々木一夫)

【評】入院病棟の夜の一室。点滴の音が聞こえるほどの夜の静けさ。自分の腕に入ってくる点滴の一滴一滴が、「命を繋げ」と言い聞かせようとでもしているかのようだ。ついつい暗いほうへの連想ばかりで滅入ってる自分への励ましのような一滴一滴。結句の「一滴」の繰り返しは点滴の実態を伝えながら、その一滴一滴を噛みしめるように迎え入れている作者の生への執念ともなっていて、「頑張れ」という気持ちが自然と出てしまう。快癒を祈る。

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通学の子供らのなかほんのりと我らに無かった花の香がする  (石巻市丸井戸・松川友子)

【評】子供たちが登校した後に「花の香」が漂う昨今。自分が子供時代にはなかったことだ。80歳代の作者からすれば子供の風俗や小学生の礼儀までがすっかり変わったように映るのではないか。匂いの文化の変遷と言って片付けてもいいのかもしれないが、今の子供たちには「臭い」と責められる日常があるのではないか。きれいな作品から無理にその裏側まで読んでしまった。

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踏み分けて辿(たど)りて来たる八十路(やそじ)坂どの道とても吾の大切  (東松島市・阿部一直)

夏雲ににじむ明かりは復興の一万ドルの蛇田の夜景  (石巻市恵み野・木村譲)

煮立つ湯に丸めて入れる白玉の団子一皿夫の一周忌  (石巻市中央・千葉とみ子)

来年はもっと生(な)れかし二十個の枇杷(びわ)こわごわと脚立(きゃたつ)に捥(も)ぎぬ  (石巻市向陽町・鈴木たゑ子)

気負いつつ漁に励みし若き日の夢を見んとてひとり酌(く)みおり  (石巻市駅前北通り・津田調作)

年ふりし銀杏の一樹山門を目守(まも)るがごとく毅然と立てり  (石巻市駅前北通り・庄司邦生)

生前に味噌おにぎりを食べたいと告げられし妻通夜に手向(たむ)くる  (石巻市丸井戸・高橋栄子)

朝顔のように開いた大口でご飯掻き込む帰省せし子は  (石巻市駅前北通り・工藤幸子)

きらきらと爪にも化粧するわが友は女を主張す身のすみまでも  (石巻市八幡町・松川とも子)

幼少の時代に花を咲かせれば訛(なまり)続くよ帰省の二人  (石巻市大門町・三條順子)

アサガオの咲くよりも前に起き出でて深呼吸しつつその瞬間を待つ  (仙台市青葉区・岩淵節子)

通夜の席辛さこらえて焼香す遺影の笑顔に悲しみつのり  (東松島市・奥田和衛)

そこはかと小さな秋のしのび寄りあじさいの花紅葉となる  (石巻市大街道・宍戸珠美子)

インパルス白線引いてハート書く平和であればみごとなものを  (石巻市須江・須藤壽子)

削られし山の斜面に咲く花の黄色むらさき夕陽に映えて  (女川町・木村いよ子)

おばちゃんが身罷(みまか)りて早や一周忌陰庇(いんぴ)に我を諭してくれぬ  (石巻市桃生・千葉小夜子)

南方の雨季想わせる厚き雲いつまで続く雲のじゅうたん  (石巻市新館・佐藤習治)

【2017年9月9日(土)石巻かほく掲載】

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 作品と同じ面(裏面)に氏名(筆名の場合は本名も)・住所・年齢(学年)・電話番号を記し、〒986-0827石巻市千石町4の42、三陸河北新報社編集部・文芸係(短歌、俳句、川柳を明記)まで。連絡先は0225(96)0321。


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