心の対話(白幡和弘)

水紋

 夏場に心霊現象にまつわるテレビ番組が組まれる。肯定はしないが、非科学的だと否定もしない。ただ怖さという観点から捉えれば、実害を受ける事件や事故、自然災害といった現実的な事象の方がはるかに恐ろしい。

 仙台で勤務していた時、東日本大震災に絡んだ生と死の向き合い方を探るシンポジウムを取材する機会があった。大学の研究者らが「震災と霊性-亡き人の声を感じ、生きるという力」という難解なテーマで真っ向から議論した。

 パネリストの一人、岩手大の教授が岩手県大槌町で遺族や関係者に聞き取り調査を行い、600人を超す犠牲者の生きた証しをまとめた。その中で、亡くなった人の気配を感じるなど不思議な現象にも触れていた。

 現実に起こり得るのか、にわかには信じがたい。不可解な出来事は世の中にあるが、大半は何らかの原因で発生する。解けずに謎を残すのなら、その答えはそれぞれの心の中にあるのだろう。

 震災では命の境界線を厳格に突き付けられた。犠牲者の無念さは計り知れない。一方で生存者には「あの時にこうしていれば助けられた」と後悔の念と、罪の意識にさいなまれ続ける人も少なくない。心のケアも大切な復興の一つだ。

 犠牲者を忘れずに心の中で対話を重ねる。お盆でかなわなかった人は秋の彼岸でもいい。手を合わせ、懸命に生きた人の記憶を思い起こすことは、震災の風化を防ぐことにもなる。

(白幡和弘)

【2017年8月24日(木)石巻かほく掲載】


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