夏に思う(河北新報社石巻総局・水野良将)

水紋

 今月上旬のある夕方、石巻市の新蛇田地区をぶらりと訪れた。同地区では東日本大震災の被災者の集団移転が進む。

 公園の茶色のベンチにあおむけに寝転がった。水色の空を白い雲がスーッと流れてゆく。木々の緑葉がサラサラと風に揺れる。

 うんていや滑り台で子どもたちがはしゃぐ。ふと、近くの一戸建てから焼き肉の香ばしい匂いが漂ってきた。災害公営住宅からは赤ちゃんの元気な泣き声が聞こえる。

 復興へと向かう新しい街の息吹を感じた。

 7月下旬、自宅を出てすぐ、久しぶりにオニヤンマを見た。黒色で黄斑の姿をコンクリートの地面に横たえ、羽を失って動けなくなっていた。

 その直前に秋田市から届いた訃報を思い起こし、「何かを伝えに来てくれたのだろうか」と亡きがらに手を合わせた。

 長い闘病の末に知人の女性が30代で旅立ったという。他人思いの人だった。友人の幼い子どもへ贈ろうと、病床で帽子を編み続けていた。大勢の友が故人の冥福を祈った。

 漫画原作者で作家の小池一夫さん(秋田県出身)に、代表作「子連れ狼」がある。その中で父が息子へと思いを託す。

  川は海に注ぎて
  波となる
  大きなうねりの波
  小さなうねりの波
  寄せてはかえし
  絶ゆることはない

 

  人の生命も
  この波に同じく
  生まれては生きて
  死んでは
  また
  生まれる

 この夏の出来事に命の尊さを思う。

(河北新報社石巻総局・水野良将)

【2017年8月17日(木)石巻かほく掲載】


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