短歌(8/12掲載)

短歌

【佐藤成晃 選】

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御神籤(おみくじ)の大吉引きぬ八十半(なか)ばなれど気になる恋愛の欄  (石巻市南中里・中山くに子)

【評】生きるエネルギーの源は「愛」や「恋」の気持ちだと哲学者や心理学者は解説している。80歳を超えた身に、恋愛感情は無縁だと割り切って生きてはきたが、たまたま引いたお神籤が「大吉」で、しかもそこには「恋愛の欄」まであった。思わずひかれて読んでしまった。自分は十分に老人であると認識しながらも、青春の残照を確かめるような気持ちで読んだのかもしれない。生きる情熱の根幹を言い当てていて佳作。

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相席の一期一会の老い三人同郷憂いてほめて訣(わか)れぬ  (石巻市開北・星雪)

【評】偶然相席になった三人の老いた乗客の話。これも偶然ながら三人は同郷だった。さて、話は弾んで、故郷のあれこれを語りあった。故郷の将来を心配したり、そうかと思えば「里は良かった」の話になったりして、ついには名乗りはしないながら「お元気でね」と言葉を交わしながら別れた。偶然が作り出すドラマを五七五七七に乗せて、偶然の不可思議さを作品化した佳作。

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母の忌(き)に行くふるさとの青田道動くともせぬ白鷺(しらさぎ)一羽  (石巻市丸井戸・木村照代)

【評】母の居ないふるさとへ向かう道中の情景。一羽の白鷺が作者を迎えに出ていたのか。母不在という「空虚な気持ち」に飛び込んでくる白鷺の清潔な白は母の面影に通じているのかもしれない。白と青がくっきりとした対照を構築し、うつくしいイメージを作っている。単純な風景の中で歌われる母恋いのエレジーが捨てがたい。

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描かれしかぼちゃのようなズッキーニ暑中見舞いは元気も配る  (石巻市丸井戸・高橋栄子)

鮎釣りの早瀬に立ちて捌(さば)く竿(さお)うねりて糸の妖(あや)しく光る  (石巻市中央・田中紅)

プランターの茄子(なす)のむらさき艶々(つやつや)しどんな言葉が似合うだろうか  (石巻市駅前北通り・津田調作)

笹竹に短冊吊るすその先の飛行機雲は海へと伸びる  (石巻市駅前北通り・工藤幸子)

明け早き居間にも届く妻の鼾(はな)あきれてしばし安堵なる鼾  (石巻市恵み野・木村譲)

病室の闇に沁み入るコール音眠れぬ夜をさらに深くす  (石巻市門脇・佐々木一夫)

数千の水着つどいし長浜の今堤防にカモメが憩う  (石巻市駅前北通り・亀山牧秋)

二十五歳満州の野に消えし兄の面影しのび又香をたく  (仙台市泉区・米倉さくよ)

梅雨明けもせぬのに猛暑の日が続く行く場所もなき後期高齢  (石巻市鹿又・高山照雄)

雑草と共に引きたるドクダミの一日(ひとひ)臭いつつ日暮れとなりぬ  (石巻市丸井戸・松川友子)

繕(つくろ)いし辞書は老婆の日々の友つぶやきながら又めくりおり  (石巻市和渕・丁子タミ子)

早朝にアサガオ咲くを見ておりぬおちこちの災害の無事祈りつつ  (仙台市青葉区・岩渕節子)

親不知子不知(おやしらずこしらず)ほどの崖越えたそう千年のあの大津波  (多賀城市・佐藤久嘉)

裡(うち)にひそむいら立つ心放りたく池の金魚をあかず見ており  (石巻市蛇田・千葉冨士枝)

崇拝の神社の釣り鐘今は無しお国のために征(ゆ)きて帰らず  (東松島市・奥田和衛)

信号機は年中操業怠らず今日も無言の赤・青・黄色  (女川町・阿部重夫)

風向(かぜ)変わり時化(しけ)の兆しか漁灯の刻刻消えて闇広げゆく  (石巻市わかば・千葉広弥)

【2017年8月12日(土)石巻かほく掲載】

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