月夜の音楽会(河北新報石巻総局・古関良行)

水紋

 オオカミ男じゃないけれど、このごろ満月が待ち遠しい。満月に近い土曜の夜、石巻市北上町の山あいにある旅館「峠の湯 追分温泉」で、「月夜の音楽会」が開かれるからだ。

 木造校舎のようなたたずまいの一軒宿。峠が闇に包まれた午後8時、電球の明かりが照らすホールに宿泊客らが集まってくる。

 旅館の館主横山宗一さん(60)が楽器カホンを奏で、地元のシンガー・ソングライター渋谷修治さん(58)がギターを手に歌う。渋谷さんの澄んだ歌声が響く。

 「月夜の音楽会」はかれこれ、13年ほど続いているという。横山さんが音楽会を始めた理由を説明する。

 「渋谷修治という男の歌を聴いてほしい。それだけです。彼は高校3年の頃から、この地で歌い続けている。歌は全て、ここ北上の地に根差している。その歌をできるだけ多くの人に届けたいのです」

 イヌワシが生息する翁倉山、リアスの海、ヨシ原が広がる北上川、田んぼや畑の田園風景…。渋谷さんは、生まれ育った北上町への気持ちを歌に込めている。

 いにしえに思いをはせる「土偶」。やむを得ない事情から地元を離れた友に、変わらない古里を伝える「ソロミ山」。歌の多くは土の香りがして、心に染み入る。

 仕事を忘れて温泉に入り、渋谷さんの歌を聴く。心安らぐひとときだ。

 次回の音楽会は今週末の5日。関心のある方はぜひ。

(河北新報石巻総局・古関良行)

【2017年8月3日(木)石巻かほく掲載】

◇【旅館】追分温泉 | 一般社団法人 石巻観光協会
http://www.i-kanko.com/archives/777


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