希望のユリ(白幡和弘)

水紋

 がさつに暮らし、花とは無縁と思っていた。それが一転、魅了された。

 ユリだ。名前は「ルビーマジック」という。

 先日、触れる機会があった。恥ずかしながら、見たのは初めて。花色はクリムゾンカラー。たたずまいは凜(りん)として、気品、高級感がある。実に魅力的な花だった。

 ユリは県農業・園芸総合研究所で育成開発した。品種登録によるデビューは東日本大震災発生翌年の2月。県、被災地にとっては希望の花にもなっただろう。

 震災でにわかに生まれた花ではない。開発を担った同研究所幹部は「交配し、種の採取と10年掛かりでした」と震災前から年月を費やした苦難を思い起こす。苦労とは何か。香りと花粉だった。

 夏場に野山を散策するとヤマユリに出合う。個人的にはあの自己主張の強い芳香が好きなのだが、確かに苦手な人も少なからずいた。

 花粉も少々やっかいか。飾る場合に花びらを汚すだけではない。服に花粉の色が付着すると落ちず、家内に目を三角にされたことがある。

 ルビーマジックの花に近づき、まじまじと見た。香りは出しゃばらずかすかで、花粉がない。開発の成果であり、ほかのユリにはみられない最大の特徴だ。

 県独自開発のシンボルフラワーの可能性を秘めたユリ。花色にピンと来た人もいるはず。連携したら面白いのに、と思うのだが、そうたやすくキャッチボールはできないらしい。何とも残念だ。

(白幡和弘)

【2017年6月22日(木)石巻かほく掲載】


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