桜の開花宣言から間もなくして始まった石巻市長選は、花見の盛りと同様、短期決戦で現職が3選を決めて幕を閉じた。
選挙期間中に印象に残る出来事があった。選挙中盤、石巻市役所5階に設けられた期日前投票所の会場の様子を見に行った時のことだ。
つえを突いた小柄なおばあさんがエレベーターを降りて来た。手に投票所入場券を握り、背中を丸めてゆっくりと歩を進めた。他の人が10歩もあれば十分な距離を、3倍近くの歩数をかけて投票所に入った。
どうしても自分の1票を、自分の住む街を良くしてくれる候補者に投じたいという思いに駆られて足を運んだのだろう。
世間では衆院選の「1票の格差」を巡る区割り変更が注目されるが、人口当たりの投票者数では単純に言い表せない「1票の重み」を感じた。
現職に投じた有権者の思いはどうだったのか。当然、東日本大震災からの復興継続に期待した人も多かったはずだ。一方で話を聞いた有権者の中には「他に誰もいない」と消極的な声もあった。
投票率も、同日選だった栗原市長選70.13%、登米市長選66.18%、東松島市長選62.65%より大幅に低い44.31%。若者の政治離れという言葉では済まない。市に漂う閉塞(へいそく)感も低投票率を招いた一端ではないだろうか。
選挙戦で3度目の桜が咲いた亀山紘市長。着実な復興だけでなく、未来に希望が持てる創造的な復興に期待したい。
(河北新報社石巻総局・鈴木拓也)
【2017年4月27日(木)石巻かほく掲載】