(80)スイセン

 寒い日々がつづく中、鉢に寄せ植えした花々がしおれて可哀想と思っていたら、庭の土の中から瑞々しい芽が顔をのぞかせました。水仙です。数年前に植えた球根ですが今年も忘れず咲こうとしている…自然の律儀さにあらためて深い感動を覚えます。

 さて、水仙は英語で何と?

 高校の教科書にイギリスのロマン派詩人ワーズワース( William Wordsworth, 1770年~1850年)の代表作“ The Daffodils ”「水仙」が載っていて暗記したのを覚えています。

 “ I wondered lonely as a cloud …”
 「谷間をただよう雲のように一人さまよい歩いていると
  思いもかけずひと群れの黄金に輝く水仙に出会った…」

 また、アメリカのフォークグループ、ブラザース・フォア( The Brothers Four )に「七つの水仙」 “ Seven Daffodils ”という名曲があります。

 そうです。英語で水仙は daffodil(ダッファディル)。これは「ラッパズイセン」を指しますが、学名の narcissus(ナーシサス)という言葉もあるようです。

 この語は、ギリシア神話に登場するナルキッソスに由来します。

 この美少年は水面に写った自分に一目惚れし、口づけをしようとしてそのまま落ちて水死。死んだあとには水仙の花が咲いていた…この言い伝えからスイセンのことを、欧米では「ナルシス」のように呼び、これは英語のナルシシズム( Narcissism = 自己愛)という言葉の語源にもなっています。

 私も含めて、人間はだれしもが「ナルシスト」の要素を持っていると思います。しかし、毎朝顔を洗うときに鏡に映る自分の顔に口づけする勇気を私は持ち合わせていません。

大津幸一さん(石巻専修大人間学部教授)

【2017年3月21日(火)石巻かほく掲載】


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