短歌 (2/11掲載)

短歌

【佐藤成晃 選】

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たっぷりと汁に入れたる寒布(かんふ)海苔お椀に盛れば磯が現わる  (石巻市駅前北通り・津田調作)

【評】布海苔の香りが実感される一首。冬の荒磯で採った布海苔の香りは格別である。この一首で魅力的なのは下の句であろう。「お椀に盛れば磯が現わる」と大胆に言い切ったところが「味覚」を刺激してやまない。お椀から漂う布海苔の香りがストレートに伝わってきて、読者の喉を「ごくり」とさせる力のある作品となった。

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調整とて歯科医に上下預け来て三食分の粥(かゆ)を炊(た)きたり  (石巻市南中里・中山くに子)

【評】総入れ歯の上下が無いままの状態から生まれた一首。入れ歯の無い口で食べられる物は限られてしまう。さし当って粥を用意するのが順当なところだ。噛み合わせのしっくりしない入れ歯も不愉快なもの。微調整のために歯科医に置いてきたあとの対応である。下の句はゆったりとした流れさえ感じられるのは、歯科医への信頼があるからだろうか。

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物言わぬものの仕草のやや哀し夜半(やはん)に猫の我が顔なめる  (石巻市開北・星雪)

【評】長いこと同居している生き物への愛情から生まれた一首。猫の方では人間の言葉や意思をいくらか理解できているのではないかと思われる。それに反して人間に対して言葉で話しかけることができない猫は「仕草」で話しかける。この仕草語が人間には解読できない。懸命に何かを伝えようとして顔を舐める猫。「哀し」は悲哀を示す言葉づかいではあるが、猫に対する「いとしさ」までが入り混じった語とも読める一首である。

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回数券もう要なしと言いながら我にくれゆく見知らぬ人が  (石巻市丸井戸・松川友子)

このような場面がいつかあったと天井見つめ点滴を受く (石巻市駅前北通り・庄司邦生)

ずきずきやひりひりなりや問ふ医師の擬音語擬態語老いへ駆使せむ  (石巻市恵み野・木村譲)

ふた親はとうに居ないし夫も逝きぬ迷わずに切る湯上りの爪  (石巻市中央・千葉とみ子)

彼の街に「未完成」という茶房ありき友と語らう若き我の居て  (仙台市青葉区・岩淵節子)

さわやかにレモンの香る厨(くりや)べに食事終りぬ日曜の朝  (石巻市丸井戸・田口照子)

啄木の詩集セピアに変りても心は褪(あ)せず九十の今も  (石巻市和渕・丁子タミ子)

春を待つ雛(ひな)を飾ればよみがえる園児らと過ごせし楽しき日々の  (石巻市丸井戸・高橋栄子)

流星を競って数えた幼き日母と町まで行きし夜のこと  (仙台市泉区・木村照代)

氷雨なか通学児らの傘と靴アニメのやうに弾むもたのし  (石巻市須江・須藤壽子)

ためらいつつ新年会への声かければ独居の三人は二つ返事で  (石巻市向陽町・鈴木たゑ子)

群れなして寒の空飛ぶ鳥たちに一声かけて行く草の道  (石巻市鹿又・高山照雄)

寒行(かんぎょう)の声朗々と町を行き寺より年始の僧の来たれり  (石巻市相野谷・戸村昭子)

一人部屋に百人一首並べ見てはらからとせし昔を偲(しの)ぶ  (仙台市泉区・米倉さくよ)

目標も希望も捨てず前を見む残り少ない人生だから  (女川町・木村くに子)

六度目の元日迎えるこの浜にあの日と同じ陽(ひ)は注がれて  (東松島市・奥田和衛)

移転地に送られて来し福寿草和(やわ)し日向(ひなた)の庭に咲きそむ  (東松島市・雫石昭一)

【2017年2月11日(土)石巻かほく掲載】

■作品を募集中

 短歌、俳句を募っております。皆さんの力作をお寄せください。募集要項は次の通りです。

 短歌、俳句とも必ずはがきを使い、1枚に3首・句まで。いずれも自作の未発表作品に限ります。作品は返却しません。

 作品と同じ面(裏面)に氏名(筆名の場合は本名も)・住所・年齢(学年)・電話番号を記し、〒986-0827石巻市千石町4の42、三陸河北新報社編集部・文芸係まで。連絡先は0225(96)0321。


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