歌で伝える(久野義文)

水紋

 昨年の暮れ、東京・銀座のヤマハホールで、涼風真世さんのコンサートがあった。

 舞台デビュー35周年を記念し、ミュージカルで活躍している涼風さんらしく、歌で自分の過去・現在・未来を表現した。ステージから客席に今の思いを伝えた。

 新曲「空だけはそこにある」は、東京で1人暮らしを始めた時の思いが詰まっているという。小学2年の途中まで過ごした石巻には海があり、川があり、山があった。それが当たり前の風景でないことを東京で暮らしてみて初めて知った。が、ふと見上げたら空があった。この空は古里にもつながっているんだ、と。

 悲しかったり、つらかったりすると、人はうつむいてしまう。そんな時は空を見上げて、きょうも頑張ろうと、自分を励まそう…。歌を通じて優しく語りかけてきた。

 涼風さんはブログに、その日の空の写真を撮って掲載している。その理由が分かった気がした。

 今、大事にしている歌がある。東日本大震災後に生まれた「花は咲く」である。

 心を込めて歌う涼風さん。古里への思い、古里の人たちへの愛、これから生を受けるものへの慈しみが、満員の客席を包み込んだ。あの震災を忘れない、忘れてはいけない。強い決意のようなものが伝わってきた。

 拍手が鳴りやまなかった。涼風さんの歌に託した思いが、ファン一人一人の心にしっかりと届いた。ホテルへの帰り道、師走の銀座が温かく感じられた。

(久野義文)

【2017年1月12日(木)石巻かほく掲載】


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