観客(河北新報石巻総局・八木高寛)

水紋

 高校、大学の7年間、ラグビー部に所属した。母校山形南高の後輩が、年末年始にあった全国高校ラグビー大会に初出場した。初戦で大敗したものの、部の歴史に大きな一歩を刻んだ。

 全部員41人に対し、試合に出られるのは最大で25人。いくら練習しようと、出場できない16人はいわば「観客」として臨まなければならない。部員の数が多ければそれだけ、「観客」の数も増える。

 自身も大学では「観客」だった。部内のライバルは、高校時代に全国大会や強豪県の国体代表を経験した猛者ばかり。自分は良くても控え選手にしかなれない。練習意欲を失い、退部も考えた。

 それでも辞めなかった。かつてのライバルとは今も交流が続く。そこに選手と「観客」という垣根はない。苦楽を共にしたからこそだと思う。

 記者の仕事もある意味で「観客」だ。ニュースの当事者でない以上、いくら熱心に取材しようと、取材対象と気持ちを完全に共有することはできないと思うからだ。

 石巻に赴任して2年弱。さまざまな取材があった。当事者にとってはどれも特別な一瞬だったに違いない。

 ことしはどんな瞬間に巡り合うのだろう。完全ではなくとも、当事者と同じ気持ちを持ち、伝えられる「観客」でありたい。

(河北新報石巻総局・八木高寛)

【2016年1月28日(木)石巻かほく掲載】


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