夢をつかむ(久野義文)

水紋

 目の前に駆けてきた2人の女の子の表情は生き生きと輝いていた。

 プロの俳優と、オーディションで選ばれた市民が一緒に創るミュージカル「赤毛のアン」の第1部が終わったところで舞台裏に案内された。初めて合格し出演している石巻地方の女の子2人を取材するためだった。

ミュージカル「赤毛のアン」

ミュージカル「赤毛のアン」に出演した横山さん(前列右端)と葛岡さん(後列中央)=8月17日、東京エレクトロンホール宮城

 石巻小4年の横山菜々子さんと矢本一中2年の葛岡有さん。衣装のまま現れた2人の声は弾んでいた。

 「夢のよう」

 「思いきり楽しめた」

 女優の上白石萌音さんらとの共演に緊張するよりも、演じる喜びが勝ったようだった。

 仙台公演は13年連続。その年ごとにオーディションが行われてきた。歌がうまくてもダンスがだめなら合格できない。その逆もある。2人も1回で合格したわけではなかった。挑戦したけれども夢がかなわない年もあった。挫折を味わった。

 だが、落ちた悔しさをバネにした。不得手を特訓で克服し、「ことしこそは」と臨んだ。その結果、2人は今、ステージに立つことができた。

 諦めて折り合いをつけるのは簡単だ。が、必要なのは夢をつかもうとする強い意志、自分の可能性を信じる力だ。

 第2部の幕が上がる。夢の続きに向かって駆け出した。歌にダンスに、はじける2人。自分たちの手でつかんだ最高の夏をステージで創りあげていた。

(久野義文)

【2015年9月10日(木)石巻かほく掲載】


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください