(10・完)生き方変えた漁師生活

田代島

自宅近くの浜で白い猫をなでる石川さん。「ライオン丸」と呼んでいる

 網地島ラインの定期船が石巻市田代島の大泊漁港に到着する。恰幅(かっぷく)のいい青年が船から投じられたロープを岸壁に掛け、荷物の積み下ろしをしていた。

 「綱取り」と言われる仕事をしているのは漁師の石川祐太さん(34)。2010年6月に仙台市から島に移り住んだ。

 「求人誌で、県だったかの仲介で『漁師の勉強をしませんか』という募集を見つけて応募した」

 島には縁もゆかりもない。来たこともなかった。それまでは国分町で夜の勤め。

 「何をやっても長続きしない。妻や子どもとも別れた。このままじゃ駄目になる、変わんなきゃと思って」

 漁師の船に同乗し、勉強が始まった。ロープの結び方、刺し網を掛ける「根」と呼ばれる岩礁の見つけ方…。磯での海草採りも全て初体験。「自分で採ったフノリがお金になった時はうれしかった」と以前の仕事より手応えを感じた。

 心機一転から1年もたたないうちに東日本大震災が起きた。津波で大泊の借家は流された。

田代島

定期船が港に着くと「綱取り」の作業をする石川さん

 翌年、漁業権を取得して自分の船を持った。今では四季折々の魚介を捕る。名刺には「T-46」と大きく書いてある。「タシロ」と読ませる。島内外の仲間とつくったグループだ。

 自然と魚介を通してつながりを広げていきたいという趣旨。これまで島の竹でベンチを作って設置したり、浜の清掃や草刈りをしたりしてきた。

 島に来てから怒らなくなった。今風に言うと「キレる」ことがなくなった。

 「もし自分のように道を誤りつつある人がいたら、話し相手になりたい。自分もそういう人と会っていれば、島には来なかったかもしれないけれど」

 島に迎えられた青年は今、優しい顔を見せる。

(フリーライター・渡辺征治)

【2015年3月29日(日)石巻かほく掲載】


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