(9)交流生む老店主の笑顔

阿部ツ商店・阿部さん

「猫にあげてください、って餌を置いていく人もいるのよ」。店番をしながら優しい笑みを見せる阿部さん

 阿部ツ商店は、石巻市田代島で唯一の商店だ。アプローチの階段は日当たりが良いひな壇で、猫たちのたまり場になっている。

 店主の阿部慶子さん(87)は1人暮らし。島で2番目の年長者だ。

 「平成元年に、島の外へ移住した夫のおいからこの店を継いだの。夫は14年前に亡くなったけどね」

 店内には食料品や生活雑貨などが並ぶ。空いたスペースも多い。正直なところ品ぞろえが豊富とは言えないが、東日本大震災の時は大いに島の人たちを支えた。

 「みんなでマンガアイランドに避難したけど、食料品が足りなくなると何でも提供したよ。缶詰、ラーメン、コメとか。冷蔵庫にあった魚まで」

 猫ウオッチャーも撮影がてら店に入ってくることがあり、カップ麺にお湯を注いでもらったり、阿部さんと話し込んで写真を撮ったりと、交流が生まれている。

阿部ツ商店

仁斗田からから大泊へ向かう道沿いの阿部ツ商店。この日は猫が少なめだった

 「そういう人たちが帰ってしばらくしてから、写真を手紙と一緒に送ってくれたりするの。それがうれしくてねえ」と阿部さんの目尻が下がる。

 島に生まれ、島のなりわいは何でもやってきた。今はヨシの湿地と化している水田も、かつて30アールを所有していた。

 「昭和56年までコメを作っていたんだよ。お蚕さんを飼っている家も多くてね。他の家の桑の葉を刈って与える仕事を手伝った。猫はお蚕さんを狙うネズミ退治のために必ず飼っていたんだ。それが薬で退治するようになって、猫の役目がなくなったんだっちゃ」

 今も静かに店番を務める阿部さん。「いない時もあるけど、また来たら寄ってみて」と朗らかに笑った。

(フリーライター・渡辺征治)=毎月最終日曜日掲載

【2015年2月22日(日)石巻かほく掲載】

 


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