(6)軽やかにカキむきの音

前日に水揚げし、滅菌海水に浸しておいたカキの殻をむく。朝8時から正午までの一仕事だ

前日に水揚げし、滅菌海水に浸しておいたカキの殻をむく。朝8時から正午までの一仕事だ

 空模様は冷たい小雨。家猫はともかく、野良たちにとっては厳しい季節がやって来る。いつもなら数匹がたむろしている石巻市田代島の田代浜共同かき処理場の前は、カキを満載した籠で占められていた。猫たちはと言えば、裏手の軒下に集まり、雨をしのいでいた。

 東日本大震災の津波で被災した処理場が再建されたのは、ことし2月。カキが終盤となったころだった。シーズン当初からの本格的な稼働は、今季が初めてとなる。

 真新しい処理場には6人が並び、目の前には山積みのカキ。世間話に時折笑いながらも、手元は一瞬たりとも休まない。カッカッカッ、カリカリカリ…。1個の殻を10秒ほどでむいていく。

「陸の浜じゃ息子たちが後を継いでいるが、こっちでは難しいなあ」と少々苦い顔を見せる尾形さん

「陸の浜じゃ息子たちが後を継いでいるが、こっちでは難しいなあ」と少々苦い顔を見せる尾形さん

 何年くらいやっているのかを尋ねると、「去年始めたばかりなの。下手なんだ、オラ」と返ってきた。どう見てもウソと分かる鮮やかな手並み。島の母さんたちは冗句も軽やかだ。

 この秋、石巻地方の浜では海水温がなかなか下がらず、カキの初出荷が1週間遅れた。

 「田代は高い水温が続いて、むき始めたのは何日だったっけ。10月22日か。他の浜よりもっと出遅れた」と養殖している尾形千賀保さん(59)は言う。

 「実入りは去年よりもいいけど、ことしはシウリ貝とかが付いてしまった。だからむきにくい。養殖のロープを深い場所につるして、予防策はしたんだけどね」

 むいたカキはその日の入札に間に合わず、翌朝の定期船で出荷する。海がしけると定期船は運休だ。離島は陸の浜より条件が厳しい。

 ともあれ、浜に活気は戻ってきた。カキむきは来年3月ごろまで続く。

(フリーライター・渡辺征治)=毎月最終日曜日掲載

【2014年11月30日(日)石巻かほく掲載】

 


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