(4)移り住み定着した若者

北沢さん

陸での就職を全く経験せずに島へ来た北沢さん。「好きなことをやりたかったから」と笑う。足元の岸壁の一部は震災でまだ崩れ落ちたまま

 足元の海水はガラスのように透明で、沖合は絵具から絞り出したように鮮やかな群青色だ。もうすぐお昼。大泊漁港で、朝の刺し網漁を終えた北沢隆行さん(28)は、道具を片付けていた。「8月はいちばん何も獲れない時ですよ。ネウ(アイナメ)とか、メバルくらいなものです」

 日焼けした顔に健康的な白い歯がのぞく。

 東日本大震災の約1年前に大学を卒業。既に大泊に移住していた父の友人を頼りに島へ移り住んだ。マンガアイランドでアルバイト、その後カキ養殖を手伝いながら、漁業権の取得を目指す。住まいは島を出る人に譲ってもらったが…。

 「1年も経たないで津波で全壊するとは思いませんでしたね。笑うしかなかったですよ」

黒猫「ワグ」

インタビュー中に「ワグ」と呼ばれている黒猫が来た。胸にツキノワグマのような白い模様があるという。北沢さんは自宅でも1匹飼っている

 今はより高所にある家をみなし仮設として借りている。念願の漁業権は、震災から半年後の9月に得て、船も持った。「漁に必要なことは、ベテランの手伝いをしながら、見よう見まねで覚えました。あとはそれぞれに創意工夫が要るんです。根(漁場となる海中の岩場)の選び方とか、網の仕立て方とか…」

 釣り船を始める準備も着々と進め、書類を提出すればいつでも開業できるところまで来た。「のんびり見えるでしょうけど、本気でやろうと思ったら暇ないですよ」

 島の暮らしは、絵に描いたような「スローライフ」でもない。

(フリーライター・渡辺征治)=毎月最終日曜日掲載

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【沿岸漁の暦】
 10月はサケ、11月にマダコが掛かるようになりアワビの開口を迎える。12月下旬はマガレイ、マコガレイなどが抱卵期に。1月はナマコ、タラが獲れ、アワビは2月末まで。3~4月はワカメ・フノリ、5月はヒジキなど海藻の季節。6月から7月中旬はヒラメ。アイナメ、メバルなどの磯魚はほぼ通年。漁法は主に刺し網。

【2014年9月28日(日)石巻かほく掲載】


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