地名(及川智子)

水紋

 「茜平」「恵み野」「美園」。少し前から、石巻市内で聞き慣れない地名を耳にする機会が出てきた。調べてみたら茜平、恵み野は蛇田地区、美園は南境地区の辺りらしい。「こんな地名あったっけ」と思いながら、数年前に発行された地図のページをめくってみても見つからない。

 日頃からたくさんの買い物客が訪れる商業施設や、お祭りの告知記事を書こうとしたスーパーも、記憶していた住所とは変わっていた。

 後に、土地区画整理事業の換地処分で生まれた地名だということが分かった。

 地名はその土地の性質や過去の水害の歴史を表していると聞いたことがある。昔から津波被害に遭い、現在は大雨のたびに各地で冠水被害に見舞われる地域の名前が、一部とはいえ変化してしまっても良いのだろうかと疑問に思った。

 市の区画整理事業の担当者は「昔は地名に残すことで伝承するしか方法が無かったと思うが、今は記録し伝える手段がたくさんある」と話していた。住所はそこに住む人にとって何度も書く機会が訪れる。多くの世代に受け入れられ、愛されることも必要だという。

 市内では東日本大震災の被災者の住居環境を整備するため、宅地整備や復興公営住宅の建設が進んでいる。今後新しい住宅団地ができ、新たな地名が生まれる場所もあるという。

 住み慣れた土地を離れて新たな場所で再スタートを切る人たちが、愛着を持って呼べる地名が付けられるといいな、と願っている。

(及川智子)

【2014年9月25日(木)石巻かほく掲載】


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