(1)鳴き声に導かれ猫神社へ

田代島の猫

猫神社でくつろぐ、ねこ太郎と奥さん。5年ほど前は仁斗田港にすんでいたという

 梅雨入りしたというものの、冷たいやませは影を潜め、日差しがまぶしい。そんな初夏の一日に、石巻市の田代島に渡った。

 仁斗田地区と大泊地区を結ぶ道路の真ん中に、ぽつんと一匹の猫がいた。野良とみられる割に、毛並みはいい雌だ。

 「ニャア、ニャア」と自己主張が強い彼女と一緒に数十メートル歩き、猫神社に着いた。二つの集落の中間にある小さな社は、大謀網の元締が猫を祭ったと伝えられる。

田代島の猫

仁斗田地区の細道が交差する猫のたまり場。港から歩き始めた人はほぼ確実に猫に遭遇する


 「ニャアー」。なおも鳴く声に応えるように、貫禄のある大柄な雄猫がのそりのそりとやって来た。誰が名付けたか、「ねこ太郎」(違う名前で呼ぶ人もいるとか)。奥さんといつも一緒で、仲むつまじい。

 田代島は人口より猫が多いと、広く知られるようになった。天気がいい休日となれば、カメラを持ったハイカーが訪れる。「東日本大震災の前は1日に100人くらい来たこともあった。それに比べれば今は静かだな」と島の人は言う。

顔しかめる人も

 漁網にかかった雑魚やドライフードをあげる島民も多い。そんな「共生」の光景に引かれる人でにぎわいをもたらした一方で、ふん尿の臭いや畑を足跡だらけにされるなどして、「猫は嫌い」と顔をしかめる島民も実は少なくない。

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田代島

 田代島は震災で大きな被害を受けた。猫の存在は地域活性化の鍵を握っているが、その周りには島民たちの暮らしがある。季節の移り変わりとともに、島の今を報告していく。

(フリーライター・渡辺征治)=毎月最終日曜日掲載

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【田代島と猫】
 震災の津波で田代島も家屋流失などの被害が出た。住民基本台帳によると、3月末現在の人口は85人。猫は漁師たちにとって大漁をもたらす「守り神」として、かつて行われていた養蚕や稲作を荒らすネズミの駆除役として大切にされてきた。市によると、観光客入り込み数は震災前の2010年が約1万2000人、12年は約3400人。

【2014年6月29日(日)石巻かほく掲載】

 


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