〔10〕第4の謎「配置」(下)

住まい探偵帖@石巻

二重三重 防災の仕掛け

 神山家の現在の当主・清さんからいろいろお話を伺った。家の敷地は、他の尾崎地区の家に比べて地形的に約200メートル高いそうだ。これで納得。やはり捨松さんは三陸大津波の経験から、この敷地を選んだ可能性が大きい。

南隣に火防の神

 敷地の南隣に秋葉山(あきはさん)の石碑がある。これは尾崎地区の南端を示す印だった。秋葉山とは、火防(ひぶせ)の神・秋葉大権現のこと。もともと、ここは砂浜の空き地だったらしい。だが、単なる空き地ではなく、集落全体を火事から守る信仰的な意味があった。

 神山家の主屋の前庭、つまり家の正面に大きなカシの木があった。カシは常緑樹で燃えにくい性質があり、火災の際には水が出てくるという防火の信仰がある。

 神山家だけではない。尾崎地区の旧家では庭にカシを植える習慣があった。火事を出せば延焼の危険があり、他の家に迷惑が掛かる。座敷から海を眺めるとカシが見える。個々の家で火の用心の戒めでもあった。

イラスト・佐々木麻衣

イラスト・佐々木麻衣


 秋葉山の石碑とカシ木。一見何でもないような風景に、今は忘れ去られた意味がある。神山家は二重三重に防災の家だったと解釈したい。

 秋葉山の石碑のある集落全体の防火の象徴的な場所に立ち、カシで自らも防火の祈りをささげている。そして、あの正方形の神棚でさらに強力に安全を祈願する。集落、敷地、家の空間それぞれに防災の仕掛けがあったのだ。

敷地が四神相応

 この勢いに乗じて暴論を承知で書いてみたい。敷地が四神相応(しじんそうおう)ではないかと思うのだ。四神相応とは中国伝来の吉相の地形。東西南北にそれぞれ、川、道、池、山のある土地が理想的だ。有名なのは平安京で、東に鴨川、西に山陰道、南に巨椋池、北に船岡山がある。

 神山家は、この方位を右に90度振った配置になっている。まず東に裏山、西に海。本来は東が北で西は南だが、右に回転している。南に井戸、これを川とする。そして北に集落が広がり、道が始まる。これが右90度回転四神相応。

 神棚の彫刻は覚えていますか。東の青竜、南の朱雀、西の白虎、北の玄武と、四神が全て神棚にいる。これは敷地の四神相応に対応している。さらに本宮、内宮、外宮の戸袋の月と太陽の彫刻。これは朝から夜、太陽から月へ向かう回転を表す。左へ90度回転なので、敷地の右回転を修正していると解釈できるのだ。

 神山家は四神相応も含めて4重防災の家になり、真四角の正方形の家にふさわしい構造となる。いささか深読みしすぎかな?

(1級建築士 那須武秀)

【2014年5月11日(日)石巻かほく掲載】


コメント一覧

  1. skadmin

    お問い合わせありがとうございます。連載は筆者の都合で当面休んでおりますので、筆者に確認でき次第、おしらせいたします。(猫の目サイト担当)

  2. こうちゃん

    神山家の地形はよく存じてます、素人の私が思うにそんなにも騒ぎになるような重要な建物なのでしょうか、筆者の一方的な思い入れが強く
    まわりが見えて無いような気がしてなりません、
    なんか理解に苦しんでおります、、他所にまだまだ学術的に研究価値のある建物があるような気がします、私がお尋ねした俗称(カラ笠天井)は雄勝の大須から
    船で運んだという言い伝えはどうなんでしょうか。 200メートルの地形差?も、

  3. skadmin

    お問い合わせありがとうございます。筆者に確認いたします。(猫の目サイト担当)

  4. こうちゃん

    敷地の高さは200メートル高いは間違いと思うせいぜい1~2メ~トルかと  。

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