〔7〕第3の謎 「八角天井」(上)

住まい探偵帖@石巻

亀の甲羅をイメージか

 神山家の「八角天井」の謎を追う前に、2間続きの座敷を紹介したい。伝統と遊びの対比。ここが神棚に次ぐ見どころだ。

 奥の座敷は正面に床の間、違い棚、左に付け書院、右に押し入れがある。一見、帳台構えに見えるところが面白い。帳台構えとは本来、帳台(寝室)への入り口で、豪華なふすまが立てられた。江戸時代には、殿様の護衛のため家来が隠れる武者隠しにも使われたらしい。わざとそう見えることを狙ったのではないかと勘繰りたくなる。

 これらは座敷飾りといって、書院造りの伝統の意匠で武家の格式を表した。しかし、決して堅苦しい座敷ではない。床の間脇の藤の狆(ちん)くぐりの開口部や、付け書院の欄間の松竹梅の装飾、剥(む)き面の長押し、床框下の巾木など、数寄屋的なデザインもある。欄間に鶴の彫り物があるので「鶴の間」と呼びたい。

 剥き面の長押しとは、丸太を一皮剥いて作ったもの。これは良材でないとできない芸当だ。末口(木の上部、梢の方)から元口(木の根元の方)まで、同じ太さの丸太でないと、上下の面が隅で合わなくなってしまう。材料の良さと気仙大工の腕の見せどころだ。鶴の間は、書院と数寄屋の教科書。8畳の座敷に込められたエネルギーが伝わってくる。

イラスト・佐々木麻衣

イラスト・佐々木麻衣

 手前の座敷には、八角天井がある遊びと頓知の間。亀が全部で5匹いた。だから「亀の間」と呼びたい。残念ながら残っているのは長押しの釘(くぎ)隠しの1匹だけ。銅製でかわいい亀。釘隠しに亀が4匹、何とも愛嬌(あいきょう)があってめでたい。残り1匹は、オサ欄間にもいたが、掃除で壊れてしまった。復元したらさぞかし楽しいだろう。

 そして亀の甲羅のイメージか、天井が中心から八角形に放射状に広がる棹縁天井で、まさに八角天井と呼びたくなる。中心にはシャンデリアでもつるせそうな金具の細工があり、洋間のイメージもある。

座敷ごとテーマ

 亀の間を見て思い出すのが、京都島原の角屋(すみや)だ。角屋は揚屋(料亭)で、客をもてなすために一つ一つの部屋に趣向が凝らされている。例えば、扇の間は天井に絵や詩歌が書かれた扇が58枚貼ってある。釘隠し、ふすまの引き手、欄間も扇形で統一されている。

 施主の捨松さんは、角屋などの数寄屋建築を見て座敷ごとにテーマを決め、独特のもてなし空間をつくろうとしたのではないか? サザエさんのお母さんのように大工さんを京都・奈良に派遣して見学させた可能性もある。

 ここで新たな疑問。亀の甲羅は六角形のはず。なぜ八角形にしたのか? その推理は次回で。

(1級建築士 那須武秀)

【2014年4月20日(日)石巻かほく掲載】


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