〔1〕七つの謎の家 独特の雰囲気と実直さ

住まい探偵帖@石巻

 あなたは「七つの謎を持つ住まい」を見たことがありますか?

 日本中を探しても、まず誰もいないだろう。私だって生まれて初めて見た。答えはズバリ! 石巻市尾崎地区の「神山家住宅」だ。1907(明治40)年の新築だから、ことしで築107年になる。

 昨年、実測調査で神山家に行った。尾崎地区は、津波の大波をかぶり、神山家も長押しまで水に漬かった。幸いにも頑丈な構造のおかげで、引き潮でも流されなかった。だが、もう住める状態ではなくなった。そこで後世に残すべく、文化財調査となったわけだ。

建物各所に正方形

イラスト・佐々木麻衣

イラスト・佐々木麻衣

 神山家はタダモノではない! 一種「独特の雰囲気」と「実直さ」がある。アチコチ見ているうちにその原因が、建物の各所にある「正方形」であると気付いた。一般に住宅は「長方形」が大多数。正方形は、出てこない。

 ところが、神山家は違う。本来なら神棚の開口部は長方形だが、正方形。垂木も正方形。垂木は縦長の長方形のはず。構造的にもわざわざ正方形にする方がおかしい。北側の窓も正方形…。やたらと正方形を発見! 謎だらけなのだ。

主は神山捨松さん

 これまでの話は大きく七つにまとめられる。いわく、神山家=「七つの謎の家」。

(1)住宅の主は、神山捨松さん(1868~1906年)で、そのデザインの鍵は正方形であることが建物各部分から読み取れる。でもなぜ正方形なのだ? 捨松さんの人生に秘密があるのではないか?

(2)施工は明らかに腕のいい気仙大工。各部にその腕のさえが見られる。おそらく施主と気仙大工の協同設計だったはずだが、主たる設計者は気仙大工か? 施主なのか?

(3)日本間の「鶴・亀の間」は、ひょっとしたら京都の数寄屋「角屋(すみや)」の影響かもしれない。亀の間の「八角天井」は非常に珍しい。鶴亀は長寿の祈り、縁起がいい。そのモチーフは神棚にも浮彫で繰り返し出てくる。これらは一体何のデザインか?

(4)建物は地形模型を制作して配置されたのでは? 裏山の等高線と前面の長面浦に平行に配置されているため、裏山に登ってみると屋根の線がきれいに海岸線にそろっている。なぜこんなことをしたのか?

(5)奥さんが働く台所や収納が合理的にできている。捨松さんは愛妻家? いや恐妻家だったのか? 奥さんが強かった?

(6)八角天井は、正方形の足し算(正方形に直角三角形8個を加えれば八角形)か? 逆(引き算=正方形の四隅を削る)もある。しかし、正方形は円からも生じる(内接)。逆に正方形は円を含む(外接)。この住宅の真のデザインの鍵は円か? 正方形か?

(7)別棟の板倉も正方形がモチーフらしい。そのせいか必要以上に強固に設計されている。やはり正方形のデザインを貫いた? それとも強風地域なので強くしたのか?

 以上、七つの謎をめぐって本格的な探偵作業が始まった。次回から謎解き迷解答の始まり、始まり!

(1級建築士・那須武秀)

【2014年2月16日(日)石巻かほく掲載】


コメント一覧

  1. こうちゃん

    地区の古老から聞いた話ですが、神山さんの座敷の天井は(唐傘張り)とか言って当時、雄勝の大須あたりの分限者が左前になり、家を解体した天井部分とかを
    船で何日かかけて運んで造作したと聞いたことがありますが不確実です。

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