「石巻かほく」連載を終えて(2013年1~12月毎週日曜掲載)

 東日本大震災後、インターネットの世界で石巻地方に関する情報発信が増えている。ホームページやブログ、フェイスブック、ツイッター…。さまざま形で地域が紹介され、被災地以外では時間の経過とともに関心が薄れていく中、風化を防ぐ役目も果たす。

 石巻市の日下羊一さん(35)と妻の真理さん(34)は震災直後から写真を中心にブログ「石巻百景」で石巻の「今」を伝えている。羊一さんが文章、真理さんが主に写真を担当し、石巻かほくでも連載した。ブログを通した情報発信への思いや、連載の感想を寄せてもらった。

◇連載を終えて

 2013年1月から12月まで石巻かほくで毎週日曜日、ブログと同じ「石巻百景」というタイトルで連載を担当した。

 小学生のころは、家族だけに配る家族新聞を作っていた。学生のころは大学新聞の取材や編集に熱中し、社会人になってからは出版関係の職にも就いたが、一般向け日刊紙での連載は初めて体験。正直なところ、緊張した。

 ブログと違い新聞は、写真や文字数に制約がある。個人のブログでは通用しても、新聞にはなじみにくい話題も少なくない。毎回、楽しみつつも悩みながら、写真を取捨選択し、文章を書いた。

 新聞はブログ以上にさまざまな人の目に触れる。被災地の悲惨さを前面に出したり、刺激が強いと感じたりした写真はなるべく避けた。震災前からの石巻の風土の魅力が伝わるような、風景写真の多用を心掛けた。

 新聞連載には締め切りがある。規則正しく記事を書くことにつながり、とても良かった。締め切りがないブログは、執筆リズムがルーズになりがち。「ブログにも締め切りがあれば、もっとたくさんの記事が書けるかも…」と思った。

◇ブログでも大きな反響 変化と魅力伝えたい

 「石巻百景」のブログは、石巻地方のさまざまな風景やおいしい食べ物などについて、写真をたくさん使って紹介している。フェイスブックやツイッターも併用し、ほぼ毎日発信している。

 震災をきっかけに始めたが、震災関連の話題ばかりにならないよう、石巻の多様な魅力や風土を取り上げることを心掛けている。

 1カ月のアクセス数は15万~20万件程度。読者は大きく三つに分けられる。石巻地方で暮らしている人、全国各地や世界中に散らばっている石巻出身者、そして震災をきっかけに石巻と縁ができた人たちだ。

 ブログを始めたのは震災から8日後の夜だった。石巻市泉町の自宅は津波被害を免れ、手元にカメラやパソコンがあった。電気やネット回線が復旧したタイミングで近所の被災状況を伝える記事を書き、東京方面の親戚や知人にも読んでもらった。

 震災直後は、親戚の安否確認や食料調達に出掛けるついでに写真を撮っていた。「石巻の震災被害」とタイトルを付けたブログは反響が大きかった。渡波、湊、釜など、自宅から離れた地域にも出向き、被災状況の記録と発信をしていた。

 ブログをきっかけに、遠く離れた地から故郷を心配する石巻出身者の方と、多くの縁ができた。2011年4月中旬にはブログを「石巻百景」と改題し、長く続けていくことを決めた。

 故郷の悲惨な部分、厳しい部分だけに着目するのではなく、四季折々の美しい風景や豊かな食材はじめ、石巻の多様な魅力を伝えていければと思っている。

 最近はおおむね週2~3回のペースで石巻地方を巡り、撮影している。天気が良く、空気が澄んでいる日は里山の頂上などから遠景を狙う。建物の解体が進み、見通しが利くようになった被災地域も、なるべく晴天時に撮影する。曇天・雨天の日は石巻の食品や特産品を屋内で撮影したり、文献を調べたりしている。

 12年の夏ごろから、撮影時の移動に車を使うようになったが、現在も自転車や徒歩を併用している。自転車を車に積んで出掛け、目的地付近では自転車に乗って撮影する場合も多々ある。車では見落としてしまいがちな各地の表情を、できるだけ拾い上げていきたい。

 これからも、震災後の石巻の変化の記録と、石巻のさまざまな魅力の発信を、同時進行で続けていければと思っている。

(石巻市・日下羊一さん、真理さん夫妻)

 
■ トヤケ森山(馬っこ山)から石巻の市街地を望む=2013年9月
 石巻百景の撮影は天候に大きく左右される。台風の直後など、空気が澄んだ晴天の日は遠景を撮影するチャンス。
トヤケ森山(馬っこ山)から石巻の市街地を望む

■ 桜が満開の羽黒山公園で、シーソーで遊ぶ親子=2013年4月
 季節の移り変わりの記録は大事にしているテーマの一つ。春は石巻地方の至る所に咲く桜を追い、カメラに収める。
桜が満開の羽黒山公園で、シーソーで遊ぶ親子

■ 朝の通学時間、JR陸前山下駅に降り立つ高校生=2013年9月
 高校生の通学風景は読者から非常に喜ばれる。自分の高校時代を思い出し、懐かしさも募る。
朝の通学時間、JR陸前山下駅に降り立つ高校生

■ 水揚げされたサバを品定めする魚市場関係者=2013年5月
 水揚げ風景はインパクトのある写真が撮りやすい半面、いつも同じような構図になりがち。意識して新鮮な視点を探している。
水揚げされたサバを品定めする魚市場関係者

■ 臨港線線路跡に咲くタンポポと日本製紙石巻工場=2012年5月
 震災後の変化を記録することも大事なテーマ。被災した臨港線の線路はいったん取り外されたが、新たな線路が敷設され復旧した。
臨港線線路跡に咲くタンポポと日本製紙石巻工場

■ 石巻川開き祭りの花火大会で、旧北上川沿いの被災建物の跡地に集まった観客=2012年8月
 人物にクローズアップした写真はほとんど撮っていない。いつも周囲の風景とセットにしている。
石巻川開き祭りの花火大会で、旧北上川沿いの被災建物の跡地に集まった観客

【2014年1月3日(金)石巻かほく掲載】

|→ (44・完了) 街の夜景

■ 石巻百景について http://ishinomaki-photo.blogspot.jp/


コメント一覧

  1. 石原正也(旧姓荒木)

    日下様。長きに渡りありがとうございました。当方、石巻高校卒業生で、現在、熱海に勤務しております。熱海は夏場を中心に四季折々に観光目当ての花火大会が開催されます。その花火を見ては涙ぐんでいます。でも少しずつ復帰している仲間の声を聞き、自身の活力にしております。これからも番外編として届けて下さいね。イシハラ拝

  2. Pingback: (44・完) 街の夜景/馬っこ山は眺望抜群 | メディア 猫の目 情報

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)